例えばかって小泉純一郎元首相は在任時に「景気が回復すると構造改革ができなくなる」と明言した。あるいは筆者もラジオ番組で、某自民党有力議員から「景気回復待ってると増税できなくなる」と直接聴いたことがある。もちろんここのでの「増税」は消費増税のことである。消費増税は、財政再建路線の日本における中核的な手段である。手段でしかないのだが、実際には消費増税はしばしば自己目的化してもいる。

衆院選翌日、会見を終えた安倍晋三首相
=2014年12月、東京・永田町の自民党本部
衆院選翌日、会見を終えた安倍晋三首相
=2014年12月、東京・永田町の自民党本部
 アベノミクスは金融政策を中心にしてデフレ脱却を目指すのだが、2012年末から13年までの(消費増税による駆け込み需要期を抜かす)実質GDPで2.6%の増加という目覚ましいものであり、その間、雇用状況が現在に至るまで大幅な改善に至っている。アベノミクスの成果を客観的にみることが重要だ。そしてこの金融政策中心の効果を今日に至るまで妨害している国内要因は、消費増税の持続的な悪影響である。消費増税自体は民主党政権の負の産物だが、安倍政権がその実行を2014年4月にしたことは事実であり、それは明瞭な「失政」だ。ところが興味深いのは、この消費増税の「失政」は政治的なライバルたちにはほとんど焦点があてられていない。むしろ与野党問わずに、アベノミクス批判は、消費増税や不安定な海外要因ではなく、アベノミクス(つまり中核の金融政策)自体の効果が乏しいか、あるいは悪しき副作用があるために、いまの経済の低迷があると語られていることだ。これは主要メディアや「市場関係者」(実際には数十名程度のアナリストを中心とした既得権的な小集団)も同様の態度をとっている。ともかく消費税の悪影響をできるだけ無視するのが、安倍政権のライバルや批判者たちの発言パターンである。

 ところで消費増税は誰が推進しているのだろうか? 経済政策は自然現象ではないので「誰が」が存在する。簡単にいうと財務省以外にその主体はありえない。さらにいえば財務省とそれをとりまく上記の「消費税の悪影響を無視している」政治家、メディアや市場関係者たちも含む、「財務省グループ」だ。しばしばその行動は倒閣的なものにつながるほど、日本ではすさまじいスーパー権力だ。その具体的な政治的パワーは、例えば山口敬之『総理』(幻冬舎)などを読まれるべきだ。実際に、消費増税を二度も先送りした第二次安倍政権でさえ、先ほどのように2014年には一度「失政」をしているし、またデフレ脱却のためには消費増税ではなく「消費減税」と同時に消費増税路線の廃棄が望ましいのだが、それを果たしえていない。それだけ財務省の消費増税というほとんどカルト的な妄執は強いとみていい。それでも現状の安倍政権は、この財務省のカルト的な妄執と過去いかなる政権もなしえなかったほどの「闘い」をみせたことは最大評価すべきだ。