日本の株式市場のメインプレーヤーは外国人投資家だが、巨大クジラが買ってくれるのだから、彼らは安心して株を売買できた。しかし、仕手戦というのはやがて崩れる。その兆候が今回の5兆円マイナスだろう。
 
 この仕手戦の弊害は、運用損失だけではない。日本の株式市場をほほフリーズさせてしまった。クジラの「爆買い」によって、日本の株式市場は「官製市場」になってしまったのだ。日本経済新聞の8月29日付記事は、次のように書いていた。
 
《「公的マネー」による日本株保有が急拡大している。日本経済新聞社が試算したところ、公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)と日銀を合わせた公的マネーが、東証1部上場企業の4社に1社の実質的な筆頭株主となっていることが分かった。株価を下支えする効果は大きい半面、業績など経営状況に応じて企業を選別する市場機能が低下する懸念がある。》

 要するに、GPIFなどの公的資金が株を買ったおかげで、多くの日本企業が「国有企業」になってしまったということだ。こうなると、市場に自由がなくなり、企業業績と株価が連動しなくなる。

 中国は国営企業の天国だが、その状況を日本は笑えない。企業価値に基づいて株を買うまともな投資家は、バカを見るだけになる。

 このように、年金資金が株の仕手戦に使われていいのだろうか? GPIFなどの公的資金のポートフォリオの変更は、政治によって恣意的に行われたと見るのが常識だ。つまり、仕手筋は日本政府である。なぜか、政府は株価が上がれば景気がよくなると信じ込み、公的資金を市場につぎ込むことを選択してしまった。

 もちろん、GPIFは独立行政法人といっても、実際の資産運用はブラックロックなどの民間の資産運用会社に委託している。そうして長期的な視点で資産運用を任せることになっている。

 しかし、本当にそうしているのだろうか?

 今年4月1日にGPIFの理事長は交代している。それまでの三谷隆博理事長はじつは昨年3月末までが任期だったが、国の意向で暫定的に続投してきた。なり手がいなかったからだ。そしてやっと、後任に農林中金出身でJA三井リースの社長だった高橋則広氏が就任した。この人選は、明らかに「官邸主導」だろう。

 また、現在のCIOである水野弘道氏も、官邸の意向で選ばれている。なぜ、国民の虎の子の年金資産を預かるトップが、そのときどきの政権の意向で決められるのだろうか?