GPIFの株式運用に伴う3つのリスク

(1) 株式運用比率の引き下げによる株価低下リスク
 今のところ、安倍政権とその支持者たちは、野党がどのように批判しようともGPIFの株式運用比率を元の水準にまで下げることには同意しないであろうし、株価の動向に一喜一憂するよりも現在の株式運用比率を維持する方がマシであることは容易に想像される。

 ただ、安倍政権がそのように強気の姿勢でいられるのは、今のところは株価下落に伴うGPIFの損失額がそれほど大きなものではなく、国民も過敏な反応は見せていないからなのだ。

 しかし、これが仮に再び日経平均が1万円を切り、これまでに得た利益が全てふっとぶような事態になったらどうであろうか?

 そのようなことが起こった場合、政府は冷静な対応を取れるのであろうか? つまり、そのような非常事態に陥った場合でも、GPIFはそれまでどおり株式運用比率を高めたままでいられると言えるのか?

 しかし、政治家は本当に世論には弱いもの。

 恐らく、政治家のなかから「何故そんなに株価が下がるなかでいつまでもGPIFが株式投資を続けるのか」というような批判が出るのは必至であろう。しかし、仮にそうしてGPIFが株式を売りに出せば、株価はさらに下がるという悪循環に陥ってしまうのである。

(2) 年金積立金減少に伴う株価下落リスク
 既に見たように、株式の運用比率を引き下げないとしても、積立金の総額が減少するならばGPIFの株式運用額は減少するので、それが株価を下落させる要因になり得る。

 見方によってはとてつもない額とも言える140兆円ほどの年金積立金であっても、仮に毎年5兆円ほど取り崩していくと、あと30年間で使い果たしてしまう。

 つまり、GPIFが株式運用比率を高めることよって株価上昇を狙ったとしても、その効果は長くは続かず、むしろ長期的にみれば下押し圧力をかけることになるのだ。

(3) インフレが起きた場合の株式運用比率低下に伴うリスク
 GPIFが株式運用比率を高めたのは、金利が異常に低くなった状況下で運用益を少しでも確保したいという思いからであるが、仮に今後2%のインフレ目標が達成されるような状況になった場合、日銀は金融緩和策を転換することが余儀なくされるであろうが、そうなるとGPIFとしても今度は金利上昇を前提としてポートフォリオの構築を考え直さざるを得なくなる。つまり、再び国債での運用利率を高めると同時に株式運用比率を引き下げることとなろうが、インフレの発生が景気回復に伴うものであれば問題はないが、そうでなく景気が回復しないなかで単にインフレが発生した場合には、株価の上昇がないなかにおいて株式運用比率を引き下げることになり、そうなるとそれによって株価を下げてしまうことが懸念される。
 

最後に

 要するに、GPIFが株式運用にシフトすればするほど、後々起きることが予想される株式運用の巻き戻しの影響が懸念されるのだ。株価が上昇する局面では、GPIFが株式運用の比率を高めることによってさらに株価を上昇させるので、好循環がスタートしたかに見えるものの、逆に何らかの理由によって株価が下落し続けるなかでGPIFが損失を回避するために株式を売却すれば、さらに株価を下落させる恐れがあり、だからといって株価の下落に対して手をこまねいていれば、みすみす損失を被ってしまう。

 つまり、GPIFが今のように株式の運用比率を高めてしまったということは、将来起きると思われる問題がより深刻なものになることを意味しているのだが、その際、如何にして対応するか政府やGPIFにその心構えができているのだろうか? とてもそうとは思えない。

 仮に将来、株価が急落した際、政治家が世論に押されてGPIFに株式の売却を迫るようなことになれば、まずい事態になってしまうことが容易に想像される。