さらに、運用の専門家としてもGPIFの運用に対する大きな疑義が二つある。

 一つ目は、日本株への配分が25%と異常に高いことだ。株式への50%配分はハイリスク運用としてはあり得る。ただし、その半分を自国株に投資する年金はないし、どのような運用者も行わない。分散投資が基本だから、世界株式市場における日本株式のウェイト8%に比例して投資するのが妥当で、4%が妥当なベースラインとなる。いくらなんでも25%はあり得ない。実際、カナダやノルウェーといった世界で最も評判の良い公的年金運用機関は自国株式への投資を禁じられている。自国市場が小さいこともあるが、余計な憶測や問題が生じることもあるからだ。

 二つ目は、ポートフォリオを変更したことによる影響の分析はできないと否定していることだ。今回2015年度全体で5.3兆円の損失、2016年4-6月期で5.2兆円の損失で合わせて10.5兆円になる。また2016年1-3月だけでも4.9兆円損失なので、2016年上半期でも10兆円の損失だ。しかし何よりも、2014年10月以降、つまりポートフォリオ変更後のパフォーマンスは、トータルでマイナス、1.1兆円の損失に落ち込んだ、ということだ。これはポートフォリオを変えていなければ明らかにプラスであったから(日本国債は大幅に値上がりしている)ので、短期的には変更が裏目に出た。
記者会見するGPIFの高橋則広理事長=7月29日、東京都港区
記者会見するGPIFの高橋則広理事長=7月29日、東京都港区
 この分析は運用者として当然すべきであり、変更しなければどうだったのかを示す必要がある。しかし、GPIFは官僚的な理由でそれを拒み、ただ、「長期的に見れば、むしろやりやすくなった」というような答弁を理事長がしている。これでは国民が信頼しようがない。この説明をしないのは、運用者としてあり得ない。分析をした上で、短期的には裏目だが、長期的にはむしろよい、という理由を分析で示す必要がある。それを一切せずに、単に短期のことで騒ぐな、という説明は運用者としてあり得ない。

 現在、GPIFと国民の信頼関係は大幅に低下している。GPIFに運用を任せられるのは、国民の信頼があってこそで、GPIFのガバナンスとは国民の信頼を得ることがすべてであるから、このままでは、運用の継続が危ぶまれる可能性すらある。そして、その危機にGPIFが気づいていないこと、それがGPIF最大の危機なのである。