北朝鮮の弾道ミサイルその歴史と能力


 米国防総省の資料では、ノドンの移動式発射機は、50両以下とされる。見方を変えれば、この数だけ、ノドンは連射が可能ということになる。この系統のミサイルは、噴射口が1つで、4方向から噴射口に突き出したベーンという板を動かして、噴射の向きを変え、ミサイルの飛翔方向を調整する。
北朝鮮は米国に届く弾道ミサイル開発に躍起だ(出所)防衛省「平成27年版防衛白書」など各種資料を基にウェッジ作成
北朝鮮は米国に届く弾道ミサイル開発に躍起だ(出所)防衛省「平成27年版防衛白書」など各種資料を基にウェッジ作成
 2つ目は、ムスダンに代表される旧ソ連の液体燃料の潜水艦発射弾道ミサイルR-27の系統だ。北朝鮮は、ソ連崩壊(91年)前後に、R-27と、そのエンジン4D10を約50基入手したとされる。4D10は、メインエンジン1基の他に、偏向可能な小型のロケットエンジン2基を組み合わせた構造。小型のロケットエンジンの向きを変えて、ミサイルの飛翔方向を制御する。

 R-27は旧ソ連時代に653発が試射され、579発が成功と安定した性能を示したとされる。ムスダンは、全長約9mのR-27を12m余に延長して、燃料と酸化剤の量を増やし、4D10、または、その北朝鮮版エンジンを使用したとみられ、最大射程は2500kmとも4000kmとも言われる。

 ムスダンは、最大射程なら日本を飛び越えるが、物理的には意図的に高く打ち上げて手前に落とす方法で日本を狙うことも可能だ。もし発射実験に成功して運用が開始されれば、日本のイージス艦に現在装備されている迎撃ミサイルでは迎撃が困難であり、日本にとって厄介な存在となりかねない。

 3つ目は、旧ソ連のOTR-21固体推進薬弾道ミサイルをベースに開発された短距離のKN-02ミサイル。液体の燃料よりも発射準備に時間がかからない固体燃料で、燃料と酸化剤を混ぜたゴム状の推進薬を充填したケースの中で燃焼させ、噴射する。射程150km程度とされるKN-02は、日本には届かない。 

 4つ目は、先述の「銀河」だ。第1段はスカッドのエンジン4基に偏向可能な小型ロケットエンジン4基、第2段はスカッドまたはノドンのエンジンを1基、第3段は固体推進モーターを使用しているとみられる。つまりこれまでの3系統の〝混成〟といったところ。米本土を狙う大陸間弾道ミサイルとして使用するなら射程1万2000kmに達する。ただし、一度、大気圏外に出た弾頭部が大気圏再突入の熱や振動に耐えられるのか、また、全長32mという大きさから発射準備が偵察衛星や偵察機から見られないように隠す竪穴式の発射装置「サイロ」の有無がカギとなる。

 北朝鮮メディアは、3月24日に、弾道ミサイル用の固体ロケットモーター、4月9日に大陸間弾道ミサイル用の液体燃料エンジンの試験の画像を公開し、それぞれ金正恩氏が現地指導したと報じた。それだけ、北朝鮮にとっては重要ということだろう。液体燃料エンジン試験の画像を見ると、噴射の筋に太いのと細いのとがあるのが分かる。これは、何を意味するのか。

 朝鮮中央通信は、3月9日、銀色の球体を前にした金正恩氏の「核爆弾を軽量化して弾道ロケットに合わせて標準化、規格化を実現した」との発言を複数の画像とともに報じた。その画像の中に、まだ詳細は不明ながら移動式の3段式大陸間弾道ミサイルと見られるKN-08の、第1段下部と思しき部分に大きさの異なる噴射口が映り込んでいた。4月9日の画像と比較すると、KN-08の1段目は、4D10系列の主エンジンと副エンジンを複数組み合わせたものとも推測され、同様に詳細不明な大陸間弾道ミサイルKN-14も同形式の可能性がある。


日本にとって無視できないムスダン(共同)
日本にとって無視できないムスダン(共同)










 ここで、気にかかるのが、ムスダンの失敗である。4月15日の失敗後、28日まで、北朝鮮の技術者が、何もしなかったとは考えにくい。2週間弱の期間では発見、改善できなかった、何か抜本的問題があることを示唆するのか。もし、それが4D10系エンジンに関わるなら、KN-08やKN-14移動式大陸間弾道ミサイルの性能への〝疑問符〟につながりかねない。

 そんな状況のまま党大会を迎えたことが、金正恩氏の「敵対勢力が核でわれわれの自主権を侵害しない限り……先に核兵器を使用せず」との「活動報告」に盛られた核先制不使用表明の背景にあるのだろうか。