さきほどの「理解が乏しいか、またはアベノミクスに批判的なエコノミストやアナリスト、経済評論家やメディアの記者」を、長いのでここでは「市場関係者Z」とまとめる。この市場関係者Zは、事実上のリフレの実現を妨害する既得権集団である。その意味では、消費増税などの緊縮政策で、実質的なデフレ経済を継続させ、また金融政策に重い負担を強いている財務省と同様の勢力だ。これらの集団に加えて、今年になって急速に存在を誇示している「反リフレ」「反アベノミクス」集団が存在する。マイナス金利でも円高に投機的なポジションをとるヘッジファンドである。

内閣官房参与の浜田宏一イェール大名誉教授
 今年になって採用された日銀のマイナス金利政策には、金融緩和の効果がある。もちろん効果の大小で議論はあるが、緩和スタンスであることは変わりない。金融緩和は自国通貨を減価、つまり円安の方向に誘導していく。他方で今年に入って円高の傾向は著しく、1ドル120円台から現状では102~3円であり、一時は1ドル100円を割った。25%以上の円高傾向が現出しており、これはほとんどの通貨についても同様の傾向がみられる。金融緩和傾向の中で、この過度な円高傾向は異様に思える。

 この過度な円高進行については、中国経済の減速リスク、米国経済のピークアウトの可能性、イギリスのEU離脱ショックなどで、「比較的リスクの少ない安全資産である円買い」の動きの帰結として説明されている。だが、このような見方に対しては、リフレ派の何名かは違った見方を提示している。浜田宏一イェール大学名誉教授、高橋洋一嘉悦大学教授、そしてエコノミストの安達誠司氏(丸三証券経済調査部部長)らである。

 ここでは優れた世界経済の展望ともなっている『英EU離脱 どう変わる日本と世界』(KADOKAWA)を出版したばかりの安達氏の見解を、同著から紹介する。安達氏によれば、世界経済が「リスクオフ・モード」(投資家がハイリスク・ハイリターンの投資戦略を回避する状況)になると、円が買われる(=円高になる)傾向が今年になって特に強い。これは「安全な資産」として円を買うというよりも、むしろ世界経済が「リスクオフ・モード」になっても、日銀の金融政策がより消極的だったことで実現したという。例えば、イギリスのEU離脱の国民投票のあともこの「リスクオフ・モード」の状況であり、そのときに日銀は追加緩和しないだろうという観測が、海外投資家に急速な円買いを促した。安達氏は「海外投資家」といっているが、その中の有力プレイヤーはヘッジファンドだろう。浜田氏、高橋氏もほぼ同様の見方をとっている。