以上のような弊害が顕著になると、企業の存続に黄色信号が灯ることにもなりかねません。ジャニーズ事務所においても、一部の中小企業と同じく、このような兆候がみられるようであれば、マネジメント全般を見直す時期に差し掛かっている可能性があります。


芸能プロダクションにおける「コーポレートガバナンス」


 ジャニーズ事務所と同業にあたる芸能プロダクションの中に、サザンオールスターズや福山雅治さんのマネジメントなどを手掛けている株式会社アミューズという企業があります。アミューズは、株式を上場している上場会社ですので、株主に対して経営上重要な情報にを、定期的に開示しています。例えばアミューズのサイトでは、財務諸表や企業理念、ビジョン、経営方針はもとより、所属アーティストに関する重要な情報等も定期的に更新されており、情報公開についてはジャニーズ事務所よりも、ずっと積極的であるといえそうです。

 また「コーポレートガバナンス」に関する基本方針も掲載しており、経営上の意思決定に関するプロセスを明示するとともに、「的確・明確な意思決定」を迅速に行うための組織体制も整えているようです。

 仮にジャニーズ事務所が、アミューズ同様上場企業であったと仮定すると、週刊文春が昨年報じた「ジャニーズ事務所の副社長が、女性マネジャーに対して、SMAPを連れて独立するように促した。」という主旨の記事が事実であった場合、業績の悪化を招くリスクが高い言動であるため、株主に対して説明責任を果たす必要が生じたはずです。

 また今回のSMAP解散決定についても、仮に解散に至った経緯が、ジャニーズ事務所のマネジメント上の問題が一因であった、ということになれば、株主からジャニーズ事務所の経営責任を問われる可能性もあります。このように、芸能プロダクションという業態であっても、株式を上場したり、上場企業と同様のガバナンス体制を構築することができれば、外部のステークホルダーから経営陣に対するチェックが入るため、「ワンマン経営の弊害」を、いくらかでも軽減できる可能性が高くなります。


ガバナンス改革による企業イメージのアップを


 安倍晋三首相は、今年1月の参院予算委員会において、「SMAPが活動を継続する意向を表明したことを、歓迎したい。」といった趣旨の答弁をしています。また、小池百合子東京都知事も、今回SMAPが解散を表明したことに触れ、「大好きな楽曲があるので、残念ですね。」といった趣旨のコメントを出しています。このように、SMAPは首相や東京都知事までがコメントを求められるほど、パブリックな存在になっていたのです。
安倍晋三首相
安倍晋三首相
 ジャニーズ事務所には、SMAP以外にも「嵐」や「TOKIO」など、SMAP同様にパブリックな存在といえるグループやタレントが多数在籍しています。今後、今回の「SMAP騒動」のような事態が起きるリスクを抑止し、大企業並みの規模をもつ事業展開を継続していくためには、ジャニーズ事務所自体も中小企業に多い「ワンマン経営」形態から卒業し、アミューズなどの上場企業が、成長過程で行ってきた経営改革に着手する必要があるように感じます。

 そのためには、上場企業と同レベルのガバナンスの整備に取り組むと同時に、積極的な情報開示、社内コミュニケーションの充実などの改革も併せて行っていく必要があるのではないか、と推察されます。

 ジャニーズ事務所は経営者が高齢のため、事業承継の時期にあるようです。よって経営者は事業承継を良い機会として捉え、「パブリックなサービスを提供している企業」であることを再認識し、ガバナンス改革等への着手を通じて、社会的な信頼を取り戻すことが望ましい、と考えられます。それが所属タレントや社員はもとより、多くのファンにとっても、最善の策になるのではないかと思います。(シェアーズカフェ・オンライン 2016年8月22日分を転載)

【参考記事】
■「営業部長 吉良奈津子」が軽視する、広告業界の職業倫理
http://takaokawasaki.blog.fc2.com/blog-entry-34.html
■選挙公約から垣間見える、小池百合子氏の戦略思考
http://takaokawasaki.blog.fc2.com/blog-entry-32.html
■企業風土改革に失敗した、三菱自動車の末路
http://sharescafe.net/48502678-20160502.html
■「ショーンK氏問題」から考える、コンサルタントの学歴詐称
http://sharescafe.net/48110506-20160317.html
■ブランディングの後進国であることを示した「東京五輪エンブレム問題」
http://sharescafe.net/46134516-20150903.html