清義明(フリーライター/オン・ザ・コーナー代表取締役)
蓮舫氏の「二重国籍」を問題視する一部の指摘があって、あれやこれやで議論があるようです。
二重国籍問題で会見する民進党・蓮舫代表代行=9月13日、東京都千代田区 この議論のなかには眉を顰めたくなるようなものから、なるほどと思わせる意見などもあり、改めて日本の国籍概念について考える機会になっているという意味で、自分はポジティブな結果につながるのではないかという感触をなんとなく得ています。そもそも、この二重国籍(以下「重国籍」とします)を禁止しているルールが、もはや日本とアジアの数カ国に代表される、いわば人権後進国のみのものだからです。まずはこれをあぶりだすという意味ではいいことではないかと。
日本社会のガラパゴス化については、様々に言われておりますが、重国籍の禁止もそのひとつです。その証拠に法務省も事実上、重国籍を容認してきているという話をこれからまとめていきましょう。
まずは、蓮舫議員の「二重国籍」疑惑について、これが「違法」なのかどうか、ざっくりと結論を出しておこうと思います。もうこれはいくつかも識者の方々に指摘されていることなので、もういいよ、という人は飛ばしてください。
で、結論を先に書きますと、なんら法的に問題はないということになります。
理由は以下のとおり。
(1)日本の国籍法により、蓮舫議員は日本国籍を取得したと同時に国籍離脱をしなければならなかった。
(2)その離脱しなければならない国籍は、台湾(中華民国)ではなく、中華人民共和国である。
(3)日本は台湾を国家として認めていないため台湾人に対する国籍取り扱いは中国のものがベースになる。
(4)中国国籍法第9条には「外国に定住した中国公民が、自らの意思によって外国国籍に加入あるいは取得した場合、中国国籍を自動的に喪失するとある」
(5)従って、自動的に蓮舫議員は二重国籍状態を解消している。
(※注)
いや、台湾の人に中華人民共和国の国籍法が適用されるなんておかしいじゃないか、という人にもいらっしゃるみたいなので、もうひとつの角度から。法務省のWEBサイトの「国籍選択の流れ」を見てみましょう。



これによると、
・2.日本国籍を選択する人が
・(2)日本国籍の選択宣言(国籍選択届出書/戸籍法104条の2)をすれば
・国籍の選択義務(国籍法14条2項)は果たしたことになる。
・・・ということで、要するに、台湾国籍がまだ残っているとしても、国籍の選択義務は果たしているので、法的にはなんらやましいことはないのである。
もちろんその事実を確認していなかったということが議員としてどうなのかという議論はあるかもしれない。政治家としての甘さがあったと問われれば、実際のところそうかも知れない。しかし法的に問題がないものであるかぎり、それはあくまでも選挙を通じて有権者が投票行動で判断すべきことであって、それをクリアするならばとやかく言われる筋合いではなくなるものだろう。
どういうことかというと、質問者は台湾か中国かという質問なのに、いやそうでなく、日本だという答えなわけで、これは端的に言えば質問に答えていない。相手がどんな国籍だろうと、日本の法務省は日本の国籍法をもとに事務取扱をしているのは、答えるまでもない。ようするに質問に答えず、その手前の話を言っているわけである。
どうしてこんなグレー・・・というか質問者をいわばバカにしたような答えを法務省がしているのかについては、もちろん質問者が無知なのを逆手にとって、「そもそも論」でやり返しているという側面もあるのだが、この法務省の態度についてはわからないでもない。こちら、後ほどまとめて拙ブログにて書かせていただきますので、そちらご参照ください】