ただ、問題はそれだけではない。もんじゅは、高速炉の核燃料サイクルにおける基幹的技術の一つだが、その廃止論は、既に商用化されている軽水炉の核燃料サイクルまでも否定したい人々に対して、根拠無き勇気を再び与えてしまうだろう。そして、現在の原子力発電の主流である軽水炉そのものまでも否定し、非常に乱暴な反原発・反サイクルの空気がまたぞろ醸成されるかもしれない。数名の元首相たちが「原発即ゼロ」を盲目的に唱えているような状況でもある。

 だからと言って、エネルギーという一国の経済・生活・文化・安全・環境保全の全てを左右する基幹インフラの在り方を「空気」で決めて良いはずはない。現実を直視しながら、将来も見据えた賢察が切に求められている。今の原子力発電の主流は軽水炉。昨年末のパリ協定で、日本は2030年度に2013年比で温室効果ガスを26%削減すると約束した。そこでは、電源構成の20〜22%を原子力(軽水炉)で賄うことが大前提となっている。福島第一原発事故当時に46基を数えていた国内の商用原子炉のうち、6基の廃炉が決定し、26基について原子力規制委へ『再稼動の申請』がなされている。現在までのところ、川内原発1・2号機、高浜原発3・4号機、伊方原発3号機の計5基が新規制基準に適合するなど原子力規制委の審査に合格している。

 「原発がなくても大停電は起こっていない。電力供給の安定は保たれている。だから、原発は電力の安定供給には必要ない!」 ——— 脱原発・反原発を叫ぶ勢力には、こういう論調は歴然とある。だが、それが大きな誤解であることを証明する事態が最近起きた。9月8日正午過ぎ、愛知県西三河方面、岐阜県岐阜、西濃、中濃方面で大規模な停電が起きた。東海地域で発生した落雷により、中部電力の送電網に障害が発生したのだ。落雷の被害を受けたのは幸田碧南線。中部電力の大型石炭火力発電所である碧南火力発電所で発電した電力を東海地域へ供給する役割を担っている27.5万Vの超高圧送電線だ。

 幸田碧南線の回線は2つだが、どちらも落雷で機能が損傷。それに伴って碧南火力発電所1〜5号機の総出力410万kWも瞬時に停止した。その影響で中部地方では電力供給力が不足し、需給バランスが崩れて周波数が低下し、大規模な停電が発生した。愛知県内22万世帯、岐阜県内14万世帯の合計36万世帯が約35分間も停電。周波数が低下した影響で、北陸新幹線に信号トラブルが発生し、多くの列車の運行が遅延。落雷による停電は、その後も三重県内などで続いた。停電それ自体は同日中に全て解消したが、電力供給安定面での不安はしばらく拭い切れなかった。