震災による福島第一原発事故後、明快な安全上の理由はなく、また、法的な根拠もなく、菅直人首相(当時)の要請だけで停止を強制され、それが今も続く中部電力・浜岡原発電所3〜5号機の計362万kW。加えて、今回の碧南火力発電所410万kWというたった1カ所の石炭火力発電所の停止。これらにより、電力供給力は大きく損なわれ、大停電が発生する危険性が高まったため、他の大手電力会社に大量の応援融通を求めた。不測の事態が起これば電力供給がすぐ綱渡り状態になってしまうことが、現実に起こったのだ。「原発は電力の安定供給には必要ない!」という脱原発・反原発を叫ぶ勢力の主張が大嘘であることが示された。
中部電力の碧南火力発電所
中部電力の碧南火力発電所
 9月8日午後2時、全国的な電力需給調整を行う「広域的運営推進機関」は、東京電力パワーグリッド、北陸電力、関西電力、中国電力の4社に対し、同日夜遅くまで3回に分けて数百万kWに及ぶ電力の応援融通を指示した。翌日、碧南火力発電所では全基の運転が再開したので、一応無事な結果となった。この間、中部地方では、運転開始から40年超の「老朽火力発電所」が400万kWにも上り、それらを酷使して安定供給を確保していた。つまりこうした綱渡り状態は、送電網の障害と大型火力発電所の停止が発生すると電力需給に大きな悪影響が生じることを改めて浮き彫りにした。同時に、大型の安定電源でもある原発が停止し続けていることで、電力需給面での脆弱性を招いていることが図らずも明らかになった。

 こうした実情は、中部地方だけのことでない。原子力規制委の新規性基準適合性審査の長期化や、地方裁判所の民事訴訟・仮処分決定などによる悪影響で、原発の再稼動はなかなか進んでいない今の日本。一方で、そのために電力需給上のリスクに直面しているという事実を直視していくことが不可欠である。どうであれ、既設の原発(軽水炉)をフルに活用していくことは、現に必須である。

 その更なる活用を進め、資源として再利用できるという核燃料の利点を現在の技術水準で実現させる仕組みが「軽水炉サイクル」。これは、軽水炉で利用した使用済燃料をそのまま廃棄するのではなく、①再利用可能な資源(プルトニウムとウラン)と廃棄物に選別する「再処理」を施し、②プルトニウムとウランの混合燃料(MOX燃料)を「再利用」するとともに、③廃棄物だけを安定的な状態にして「最終処分」するという仕組み。海外にも数多くの先行例がある。