ナトリウムは外気に触れただけで発火するため、常温では極めて取り扱いの難しい物質である。日本が開発した高速増殖炉「もんじゅ」は、ロシアに先じて1994年には臨界を迎えたが、翌年にナトリウム漏出火災事故を起こしそれ以来運転が止まってしまった。そして、このたび政府はもんじゅを廃炉にするという。本当にそれでいいのだろうか?

 世界各国は長年の原子力発電で生じた使用済み核燃料の再処理に困っている。特に、その過程で大量に生成されたプルトニウムをどうするのかというのが喫緊の課題だ。

 2000年に米露の核兵器削減交渉が合意したことにより、ロシアには34トンのプルトニウムの余剰が生じた。これを処分するためには、廃棄物として捨てるか、ウランと混合して混合酸化物(MOX)燃料にして原子炉で燃やすか2つに1つしかない。

報道陣に公開された高速増殖原型炉もんじゅの
原子炉上部=2015年11月、福井県敦賀市
報道陣に公開された高速増殖原型炉もんじゅの 原子炉上部=2015年11月、福井県敦賀市
 ロシアはプルトニウムを「資源」だと認識している。そのため、後者を選択したのだ。しかし、ロシアは実はこの時点でMOX燃料を作る技術がなかった。では、誰がその技術を教えたのか? 毎日新聞は次のように報じている。

 《問題解決を図ろうと、「もんじゅ」などで実績がある核燃料サイクル開発機構(現・日本原子力研究開発機構)が99年5月から米国の要請を受けてロシアの研究所と共同研究を始めた。製造したMOXを原型炉「BN600」で使う試験を繰り返し、年1トン以上のプルトニウムを消費する計画にメドがたった。今回、その成果が生かされた形で、「BN800」には、2種類のMOXと高濃縮ウランが燃料に使われているという》(毎日新聞 2015年12月18日)

 なんと、その技術を教えたのは日本なのだ。日本では高速増殖炉は廃炉される予定だが、一部で日本の技術を利用したロシアの高速増殖炉は商業運転まであと一歩となった。

 日本はもんじゅの廃炉だけでなく、六ケ所村の核燃料リサイクル事業も安全審査の遅延により未だに稼働できない状態が続いている。こうしている間に、ロシアに続き、支那やインドまでもが高速増殖炉の開発に勤しんでいるのが現状だ。原子力に頼らず、国のエネルギーが賄えるならそれはそれで素晴らしい。しかし、現実はどうだろう?

 中東情勢は混迷の度合いを深めている。そして、南シナ海、東シナ海において支那海軍が日本のシーレーンを脅かしている。もう少し広い視点でエネルギー問題について考えてみれば、違った結論も見えてきそうな気もする。しかし、これが政府の決断であるなら仕方あるまい。日本は大きなチャンスを棒に振ったかもしれない。