監督を辞任し、ラミレス新監督にその座を譲った中畑清前監督の思いも、今季のベイスターズに託されている。監督を追われた人がその後もチームに愛情を注ぎ続ける例は決して多くない。まして中畑は現役時代、ベイスターズではプレーしていない。

 昨オフ、野球教室のニュースを見たとき、監督を辞任した中畑が横浜DeNAのユニフォームで指導する姿に目を見張った。元巨人の肩書きは野球界では絶大と言われ、たとえ一年でも巨人のユニフォームを着た経験があれば、引退後ほとんど「元巨人」を売り物にする。中畑がさっさと巨人のユニフォームに着替えても不思議ではない。中畑は心をベイスターズにとどめた、それもまたファンのベイスターズ愛を高める一因になっただろう。

 チームの滑り出しは決して良くなかった。開幕から4月いっぱいは、3連戦でほとんど負け越し。2勝1敗で勝ち越したのは開幕から5カード目の対ヤクルト戦の一度だけだった。5月に入ってようやく2勝1敗ペースとなり復調の兆しを見せるが、交流戦では3連勝3連敗を繰り返し、波に乗りきれなかった。それでもラミレス監督は大きな動揺を見せず、粘り強くチームの形を整え続けた。

プロ野球DeNA対ヤクルト。ファンの声援に応えるDeNA・ラミレス監督
=9月7日、横浜スタジアム
プロ野球DeNA対ヤクルト。ファンの声援に応える
DeNA・ラミレス監督=9月7日、横浜スタジアム
 交流戦が終わると、まず巨人に2勝1敗と勝ち越し、7月上旬あたりから再び勝ち越しが多くなった。決して連勝が続くこともなかったし、相変わらず負け越しも重ねたが、長い連敗が続くこともなく、しぶとく3位争いをリードする展開が続いた。

 印象的なのは、中畑清前監督の跡を受けて就任したラミレス監督が、明るさやパフォーマンスを売り物にするのでなく、あくまで指揮官としての風格を持って采配にあたり、開幕ダッシュに失敗したにもかかわらず、大きくぶれることなく、自らの方針と選手の可能性を信じて我慢強くチームを育て、リードする姿だった。現役時代から、日本のプロ野球の監督になることを念頭に置いていたというラミレス監督の覚悟とこれまでの準備が監督就任1年目でAクラスを実現したと言えるだろう。

 もうひとつ、球団の取り組みも、隠れた勝因として注目すべきだろう。今季のベイスターズの主な動きは1月20日、「横浜スタジアムの経営権を取得、子会社化した」というニュースから始まった。これは一見、野球とはそれほど関係がないように思われるかもしれないが、球団経営の根幹に関わる核になる変化だった。

 日本のプロ野球チームは親会社を持ち、赤字が出ても、親会社が宣伝広告費の名目で補填することで成り立ってきたと言われる。例外は今季優勝の広島カープ。メジャーリーグのチームはいずれも広島カープ同様、独立採算で経営している。球団の貴重な収入源の主なものは、入場料とテレビの放映権料、それに球場の広告や販売収入だ。とくにMLBでは、広告や販売収入が大きな伸びを示しているという。ところが、巨人にしても、本拠地球場は賃貸で、“持ち家”ではないから、広告料や販売収入は基本的に球場側の利益になる。新しく球団経営に参入したソフトバンク、楽天などはいち早くMLBビジネスの仕組みを学び、球場の経営権を取得したり、球場を傘下におさめて経営の仕組み改善を進めている。ベイスターズこれに倣ったわけで、球団が本気で経営に取り組んでいる証と言えるだろう。
 
 CSは、10月8日(土)にファーストステージが開幕する。相手は巨人。今季はベイスターズが14勝10敗1分と勝ち越している。横浜DeNAが巨人を破り、広島とのファイナルステージを戦う可能性も十分にある。