しかし、元外務省国際情報局長でベストセラー『戦後史の正体』著者の孫崎享氏は「この“好意的配慮”を払うかは米国の胸三寸で、米軍が『配慮した』といったら、日本側は受け入れざるを得ない不十分なもの」と説明する。そして、日米地位協定におけるこうした排他的な権限を最も強く意識させる条文が「3条1項」である。

 その条文にはこうある。

〈合衆国は、施設及び区域内において、それらの設定、運営、警護及び管理のため必要なすべての措置を執ることができる〉

「施設及び区域」とは米軍基地を指す。沖縄県をはじめとして日本全国には広大な米軍基地があるが、その敷地内には日本の行政権や警察権が及ばないことを示している。いわば“治外法権”を認めているのだ。

「基地内は米国に管理権があり、日本の行政当局にとってもアンタッチャブルな空間です」(前出・前泊氏)

 記憶に新しいのは昨年8月、在日米陸軍相模総合補給 (神奈川県)で起きた爆発火災だ。基地職員からの通報を受けて市消防隊員が駆け付けたが放水できず、鎮火まで6時間以上を要した。

「倉庫に何が保管されているかわからず消火が遅れた。万が一マグネシウムのような物質があったら水と反応してさらなる大爆発になりかねないからです。管理権という協定の壁に阻まれ、基地の内情を日本政府も知ることができないと露呈した事故だった」(同前)

 問題の核心はその先にある。米軍の権限が及ぶのは基地施設の「内側」だけではないのだ。基地の「外」においても同様の権限が認められている現実がある。

 3条1項では米軍が基地に出入りする上での便宜を図るために、〈施設及び区域に隣接し又はそれらの近傍の土地、領水及び空間において、(日本国政府は)関係法令の範囲内で必要な措置を執るものとする〉と定めている。

「必要な措置を執る」のは日本国政府であるため、字面だけ見ると米国の“治外法権”を認めていないと読める。

 しかし2008年、国際問題研究者の新原昭治氏が米国で秘密解除された日米密約文書を公表。「関係法令の範囲内で」という文言については、「米軍側に不都合があれば『関係法令』の見直しを日米で協議する」と決められていたのだ。要は“日本の法律・権限より米国の都合を優先する”ということである。

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