僕が行ったその日の状況を、新聞記事は以下のように伝えている。

 約400人が抗議の声 車両180台がメインゲートに集結 北部ヘリパッド建設

【ヘリパッド取材班】東村から国頭村に広がる米軍北部訓練場の新たなヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)建設に反対する市民ら約400人は19日午前6時半すぎ、同訓練場のメーンゲート前でN1地区ゲートへの砂利搬入に対する抗議集会を始めた。市民らは午前5時すぎ、約180台の車両で車列を組み、東村平良の村役場付近から同訓練場のメーンゲートに向けて徐行運転で移動した。市民らはゲート付近に車を止め、メーンゲートを完全に封鎖する形で座り込んでいる。

 午前7時半現在、機動隊による県道70号の封鎖や検問、砂利を搬入するトラックの車列は確認されていない。

 集会は参加者全員が腕を組み、「座り込めここへ」など2曲を合唱し始まった。沖縄平和運動センターの山城博治議長は「これから本格的な建設工事が始まると予想される。だが来年2月まで工事が長引けば、ノグチゲラの営巣期間で4カ月の中断を余儀なくされる。週2回は拡大した抗議行動を行い、完全に砂利の搬入などを止め、工事を長引かせて中断に追い込もう」と述べ、今後の運動を提起した。その後、参加団体の代表が次々にあいさつした。

 これは地元の琉球新報だ。でも朝日や読売など大手新聞の記者は現場にいない。だから沖縄以外の地で暮らす多くの人は、この状況どころか、高江という地名すら知らない。この翌日には、現場で取材していた琉球新報と沖縄タイムスの記者2名が警察に拘束されるという事態まで起きたのに、大手メディアはほとんど報じない。
住民を排除しようとする自衛隊
住民を排除しようとする自衛隊
 競争原理に煽られたマスメディアは、情報をわかりやすく刺激的に加工するために、四捨五入を加速させる。その帰結として、小さな声が消えてしまう。残るのは大きな声ばかりだ。

 三上の映画も含めて、吐息やつぶやきを届けるジャンルが重要だ。つまりドキュメンタリー映画。別にマスメディアを補完するために存在しているわけではないけれど、その機能はより重要になっている。

 住民を排除する沖縄県警や警備会社の隊員の多くは、なかなか就職先を見つけられない地元の若者たちだ。彼らもつらそうだ。もしも傍に近づいたなら、微かに歯軋りの音が聞こえるかもしれない。吐息やため息を洩らしているかもしれない。

 指示を下す人たちは現場には来ない。沖縄問題の根源はここにある。

 ちょうどこの頃、マリオの格好をした安倍首相はリオの競技場で、まばゆいライトを浴びながら世界に向けて嬉しそうに手を振っていた。オリンピックの主体は開催する都市と参加する選手たちだ。国家の出る幕じゃない。思わずそうつぶやいたけれど、これもまたこの国では、小さな声として処理されるのだろう。


もり たつや 映画監督、作家。映画「A」「A2」監督。著書『A3』(集英社)、『チャンキ』(新潮社)など。