製薬企業は営利企業だ。彼らの説明を額面通りに受けとってはいけない。製薬企業が生き残るには、利益をあげなければならないからだ。彼らには、彼らの理屈がある。

 抗がん剤は数少ない「儲かる」分野だ。年率10%以上の成長が見込め、20年には世界の医薬品市場の15%を占めると予想されている。降圧剤(3%)や糖尿病薬(7%)とは比較にならない。
 武田薬品のウェーバー社長も「今後はがん、消化器、神経系の三つの分野に重点を置く」と公言しており、従来、得意だった糖尿病薬や降圧剤からは撤退することを表明している。

 製薬企業の「暴走」をチェックするのは、本来、医師の仕事だ。ところが、専門医が、その役割を果たしていない。むしろ、製薬企業と一緒に利益を独占している連中までいる。この問題については、総合情報誌『選択』9月号に秀逸な記事がでている。興味のある方は、お読み頂きたい。

 ポイントは高額な薬価差益と、処方権を専門医に限定することによる利権だ。国立がん研究センターの幹部が、自らが理事長を務める学会(日本臨床腫瘍学会)が認める専門医しか処方できないように提言し、それが実現している。

 日本臨床腫瘍学会の会員でない医師が、同学会の専門医資格を取ろうとすれば、受験料・審査料・認定料などで18万円を支払わねばなない。「日本臨床腫瘍学会は、利益相反を無視して、高額な薬価から間接的に利益を受けている」と批判されても仕方ない。

 資本主義社会で価格の決定は難しい。ただ、常識的な線があるし、小野薬品のやり方は卑怯だ。ニボルマブに幾らの値段を払うか、それは、薬価決定のプロセスも含めて、国民が納得するものでなくてはならない。そのためには、情報開示が必要だ。ニボルマブを国民皆保険の仕組みに、如何にして取り込んでいくかは、国民視点でオープンに議論しなければならない。