ハーバード大学のローレンス・サマーズ教授は2013年末から先進国の長期停滞(Secular Stagnation)を論じ始めているが、リーマン・ショック後の先進国の景気回復は弱いもので「リーマン・ショック前の状況に戻ることは容易ではない」と論じている。先進国が過剰な設備・貯蓄・労働力を抱えており、これらを十分活用するような投資機関が不足しているとの判断が根底にあるようだ。

 たしかに、先進国の成長率は1980年代・1990年代に比べると大きく低下している。先進国の中では成長率の高いアメリカでもここ10年(2007~2016年)の平均成長率は1.38%と1980年代の3.14%、1990年代の3.24%から大きく下げてきている。ちなみに、日本は2007~2016年は0.39%、1980年代は4.41%、1990年代は1.47%だった。

 多くの先進国では高度成長期・安定成長期が終焉し、成熟期に入ってきたのだ。しかし、1人当たりのGDPは高く、ほとんどが4万~5万米ドルのレベルに達している。「豊かなゼロ成長の時代」とでもいえるのだろう。成長率の低下という点では長期停滞かもしれないが、他方では成熟段階に入ったということもできるのだ。当然、インフレ率も低下し、低成長・低インフレの状況が一般的になっている。

メガバンクの看板=2012年9月13日、東京都
メガバンクの看板=2012年9月13日、東京都
 こうした豊かなゼロ成長の時代は銀行にとっても必ずしも望ましものではない。多くの企業はかなりの手元流動性を抱え、多額の銀行融資を必要とするような企業は次第に減ってきているのだ。日本でも高度成長期は銀行の時代だった。多くの企業は大きな設備投資需要を抱え、銀行から多額の融資を受け、業容を大きく拡大していった。それぞれの企業がメインバンクを持ち、銀行ごとの系列が形成された時代でもあったのである。

 高度成長時代、日本の都市銀行は第一・三井・富士・三菱・協和・日本勧業・三和・住友・大和・東海・北海道拓殖・神戸・東京と13行あった。そしてそれぞれが系列の企業を有していた。トヨタ自動車でさえ、三井銀行をメインとした三井グループ企業とされたのである。

 高度成長・安定成長の終焉とともに銀行の時代も次第に終焉を迎える。1997~98年には北海道拓殖銀行・日本長期信用銀行・日本債権信用銀行が破綻、金融危機が訪れることになる。都市銀行が破綻するなど、高度成長期・安定成長期には考えられないことだった。そして都銀13行体制は1990年代後半には崩れ、2000年代には三菱東京UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行の3大メガバンクとりそな銀行/埼玉りそな銀行、そして新生銀行の5行体制に入った。

 ある意味で銀行の時代は終わったのだといえるのだろう。銀行が企業グループを支配するということはなくなったし、トヨタ自動車・パナソニック等の企業の力が相対的に強くなっていったのだった。ドイツ銀行ショックも、日本だけではなく、ヨーロッパでも銀行の時代が終わったことを象徴しているのではないか。

 ドイツ銀行の破綻はある程度は世界的な混乱をもたらすかもしれないが、リーマン・ショックを上回る大きな危機になることはないと思われる。それは一つの時代の終わり、「銀行の時代」の終焉を示す事件だといえよう。当面、日本では円高・株安が進むだろうが、世界的大不況ということにはならないだろう。