中国の意図       


 中国が、戦後50年以上も経ってから将官等の供述書と称するものを発表した理由は、供述者だけではなく、供述書に実名を挙げられている兵士のほとんどが死亡しているので、嘘八百でも、当事者から反論を受ける心配がない。戦後賠償の新たな要求材料になると目論んだからであろう。

 朝日新聞(平成10年4月10日付夕刊)によれば、当時の「撫順(ぶじゅん)戦犯管理所」の管理教育科長で後に所長となった金源氏(72)=朝鮮慶尚北道出身=が、朝日新聞の質問に対し「当初は『百人程度を裁いて約七十人を死刑にする』との案を固め、当時の所長らが北京の周恩来首相に会って報告した。すると、首相は『裁判にかける人数はもっと少なく、死刑や無期(禁固)は一人も出すな。有期刑は最高でも二十年。今は納得できないかもしれないが、二十年後に分かる』と命じた」とのことである。

 金源氏の言を信ずれば、周恩来は、70人くらいを殺害しても、中国は得るものが一つもない。白髪三千丈式の偽供述書を書かせた方が国益であると判断したのであろう。朝日新聞は「寛大な処分」として、偽供述書を宣伝している。「死せる周恩来、生ける日本のマスコミを走らす」である。

 江沢民中国主席来日に合わせ、タイミングよく発表、わが国に精神的負い目を負わせた中国の狙いが見え見えである。

 問題になっている中国系米人女性アイリス・チャン氏の南京事件に関する根拠に基づかない〝でっち上げ″著書『レイプ・オブ・南京』も、中国に、平身低頭する、わが国の政治家、国民を見て、わが国を永久に中国の精神的奴隷にすることを狙ったものであることは疑いの余地がない。

東京裁判の検事役より日本の魂を


 普通の国の国民は、敵国に捕虜となった自国民の供述書は、偽物もしくは脅迫、強要によるものだと一笑に付す。また、50年以上も前のことを尤(もつと)もらしく、自国の悪口を述べる外国人の証言は信用せず、逆に非難する。

 ところが、日本国民から受信料を徴収しているNHK、社会の公器を豪語する朝日新聞などは、敵国だった中国の裁判記録、中国人の発言だけを、真偽を確かめず、真実として大々的に報道し、味方である防衛庁の戦史、聯隊史の内容を報道しないばかりか、その存在さえ伝えない。

 特に朝日は冒頭に述べたように、『北疃村大虐殺』との新語まで創作した。反論を加えないで放置すれば、虚偽が一人歩きして真実になり兼ねない。NHKや朝日新聞などの報道は、当時の日本軍人ばかりでなく、子孫の名誉と人権を著しく奪い、日本人としての矜持が微塵も感じられず、とても同胞のものではなく、「日本人の皮を被った中国人」としか思えない。

 朝日新聞は昭和12年の通州虐殺についての自紙の記事を読み直し、目を覚まし日本人の魂を取り戻すべきである。

 わが国民にもいずれは愛国心が芽生え、普通の国並みに戻るであろう。朝日新聞は、その時の日本国民の評価を恐れるべきである。

(月刊「正論」平成10年12月号初出)


かきや・いさお 昭和13年石川県生まれ。昭和37年防衛大学校卒業(第6期)と同時に陸上自衛隊入隊。41年大阪大学大学院修士課程(精密機械学)修了。陸上幕僚監部防衛部、陸上自衛隊幹部学校戦略教官、陸上幕僚監部教育訓練部教範・教養班長、西部方面武器隊長などを経て、平成元年防衛大学校教授。国防論講座主任として国防論を指導。4年陸上自衛隊武器学校副校長。5年退官(陸将補)。退官後は軍事評論家となり、戦勝国やマスコミなどによって歪められた日本軍の実際の姿を正しく検証し、国際関係についても評論を続ける。同時に国民一人一人が国防意識を持ち、実戦する大切さを訴える。著書に『自衛隊が軍隊になる日』『徴兵制が日本を救う』、近著に『自衛隊が国軍になる日―「兵役」を「神聖な任務」とし普通の国に』(いずれも展転社)。