ネットメディアと既存のメディアの「違い」とは何か? この問いに対する典型的な回答と言えば、「既存メディアには信頼性があるが、ネットメディアには信頼性がない」というものだろう。

 何をもって「既存メディア」を定義するのか、何が「ネットメディア」なのか、については意見が分かれるところであろうが、概ね「既存」の部分にはテレビ(ラジオ)・新聞などが入るはずだ。「ネットメディア」は「ネットコンテンツだけのメディア」という言葉で言い換えることができるだろう。

 しかしながら、ネットコンテンツの中には、新聞や雑誌などから同一情報を転載し、配信している場合も多いので、必ずしも「インターネットの情報サイト=ネットメディア」ではない。新聞社のポータルサイトなどは、あくまでも「既存メディアのネット活用」であって、「ネットメディア」とは言い切れないからだ。

 逆に、無数に存在しているネットメディアだが、一定規模以上のPV(アクセス数)や影響力を発揮し、それなりの公益性や大衆性、影響力や商業性を持っているものは多くない。ネットメディアを標榜してはいるが、単なる個人サイトの域を出ないものが多数を占める。

 一方で、個人ブログなどであっても、月間数百万PV、1000万PVを超えているようなものは、組織的なネットメディアはもとより、既存メディア以上に大きな影響力を持っている。いずれにせよ今日、その定義はもとより、ネットメディアと既存メディアの関係性やパワーバランスは曖昧だ。

視聴率1%と40万PVの違い?


 では既存メディアとネットメディアの「違い」とは何なのだろうか? 

 例えば、テレビの視聴率とネットのPVを事例に考えてみよう。テレビの個人視聴率1%は約40万人(関東地区)であるとされる。「ながら視聴」や「電源つけてるだけ」の視聴率も含まれるので厳密にはもっと少ないのであろうが、ここではひとまず置いておく。

 視聴率1%=40万人という人数を、ネットメディアにおける1日40万PVと置き換えて考えてみよう。1日40万PVという数値は、商業的に運用しているレベルのPV(閲覧数)としては極めて小さい。「話題の個人ブログ」や「ヒット記事1つ分」ぐらいだろう。個人ブログの月間アクセス数が1億PV(日割計算で1日330万PV以上)を超える市川海老蔵氏のようなケースは稀だが、それでも40万という数値はネットメディアの単位で考えれば大きな数字ではない。

 それは無名人によるコンテンツであっても例外ではない。作為的な仕込みや扇動的なタイトル付けやネット世論が喜びそうな落としどころを戦略的に設計した記事であれば、1記事だけで1日で100万PV、200万PVを稼ぐことは珍しくはない。これは一度でも商業ネットメディアを運営してみれば誰でもわかることだ。

 もちろん、ある程度のメディアの土壌や作り手のテクニックも必要ではあるが、視聴率1%を得る労力に比べれば、40万PVの獲得ははるかにその敷居は低い。

 しかしながら、「放送1回=40万人」と「アクセス数1日=40万PV」と数値こそ同じでも、消費者40万人への影響力は大きく異なるので、単純な比較はできない。そもそもテレビには長い間「娯楽の王様」として君臨してきた実績があり、その信頼性や影響力はまだまだ強く、数値以上の「念力」がある。