なぜなら、今回の件を、起こってしまった問題「1次不祥事」に対し、ダメージを最小限にする危機管理を怠って組織ぐるみの隠蔽ととらえられてしまう「2次不祥事」という企業不祥事の観点でみると「1次不祥事をできるだけ防ぐためのチェック体制はもちろん必要だが、2次不祥事への拡大をメディアは絶対防がなくてはいけない。そうした点でビジネスジャーナルは2次不祥事への対応はできたのでは」と考えるからです。

 楊井さんは、WANJで5年近く、全国紙マスメディアを対象に捏造を含む誤報について調査・検証活動してきました。その中で「まさに2次不祥事だった」というのが、朝日新聞の「慰安婦報道」「吉田調書」の対応です。「記事そのものの誤りのダメージはもちろんあるが、発覚後もむしろ正当化、矮小化させたことがメディアへの不信感を増幅させた」と振り返ります。

明らかにされなかった執筆者の名前



 ただ、今回のビジネスジャーナルの記事はもともと署名がなく、謝罪文の中でも執筆した記者が「外部の契約記者」としか公表されていません。「外部ライターである以上、他の媒体で活動するおそれがある。個人情報とはいえ、ケアレスミスの場合ではなく、故意の捏造をしたということなので、他でも活動できないよう情報共有すべき。もともと署名記事であれば情報共有できていた。不安が残る結果になった」。

 楊井さんは、ネットメディアは「社会的信頼が確立しているわけではない」「校閲・チェック機能が大手メディアほどではなく、書いた原稿がすぐネットにアップされやすい」という問題点があるとみます。「そういう意味でも、ネットメディアは、記者個人個人の責任が重い。バイライン(署名記事)を原則という方向に持っていくべき」。記事の署名が、記者の捏造予防の一対策になるといいます。

 捏造を防ぐこと以外にも、署名記事が必要と考える理由として、「ネットメディア時代ならではのニュースの読まれ方」を理由に挙げます。読者は、どこか特定のメディアのホームページを開いて記事を読むとのではなく、個々の記事にアクセスするという形態が、「ニュースの消費のされ方になってきている」からです。

 「署名があるかどうか」に加え、さらに「記者が過去にどんな記事を発表してきたか、メディア側は情報提供する責任があり、読者に記事の信頼性を考える手がかりを与えることができる」と提言します。「本の奥付」のようにどれだけの実績があるのか、ネットメディアは統一的な基準をつくり、「ネットメディアを使用する時代においては、読者側も執筆者の情報に注目して読むという習慣を広げる必要があるのでは」とメディアリテラシーの側面からも呼びかけます。