30代で日本代表の監督を務めていたとき、長野・菅平の合宿を訪ね、インタビューした印象が強く残っている。

 「ラグビーは、頭で考えて動いたのでは遅すぎます。身体で考える、例えば、膝で感じて動く、そういう感覚です」

1985年1月、大学選手権決勝でプレーする同志社大時代の平尾氏。史上初の3連覇を果たした=国立競技場
1985年1月、大学選手権決勝でプレーする同志社大
時代の平尾氏。史上初の3連覇を果たした=国立競技場
 その話を聞いて、私はその場で叫びたいほど興奮し、感激した。スポーツライターになって、出会いたいのはそういう言葉だった。最近でこそ雄弁なスポーツ選手は多くなったが、約20年前、競技中の究極の身体感覚をこれほどすんなり言語化してくれる選手に会ったのは初めてだった。

 ラグビー界の輝ける星・平尾誠二は、長嶋茂雄のような華やかさと理屈を超えたパフォーマンスを演じつつ、思わず感嘆するしかないほどの聡明さを兼ね備えていた。

 テレビドラマになった伏見高校時代はもとより、同志社大でも、神戸製鋼でも、チームメイトにはいずれ劣らぬヤンチャと猛者がそろっていた。だが、平尾誠二はいとも簡単に多士済々の面々をひとつの方向に向け、彼ら一人ひとりの能力を愉快なほどに引き出す天才だった。

 キャプテンシーという言葉がラグビー界では使われる。温かさとクールさが程よくブレンドされた平尾誠二は、まさに、そのキャプテンシーを見事に体現した大黒柱だった。