私自身は、どちらかといえば将来的に死刑はなくしてもよいという考えだから、日弁連の今回の方針を、大変な状況の中でよく決断したと受け止めている。ただ一方で、この問題が、賛成か反対かといった単純な二者択一では片付かないとも思っている。何よりも、死刑や死刑囚の実態がほとんど社会に知られていない。今は死刑執行がなされた場合は法務大臣が直接公表しているが、以前は執行が行われたこと自体、公表されてはいなかった。

 私自身は賛否について「どちらかというと…」という少し曖昧な答えになるのだが、二者択一の議論にはいつも違和感を抱いてきた。具体的な死刑囚とつきあいもあって思うのだが、彼らは社会と遮断され、その実情は世間にはなかなか知らされていない。

 連続幼女殺害事件の宮崎勤死刑囚(既に執行)とは12年間つきあい、面会も何度も行った。和歌山カレー事件の林眞須美死刑囚とも事件当時からの十数年のつきあいだ。奈良女児殺害事件の小林薫死刑囚(既に執行)とも約1年間だったが、毎月顔を合わせていた。そのほかにも冤罪で死刑台から生還した松山事件の斎藤幸夫さん(既に死去)始め、取材で知り合った死刑囚は何人もいる。
幼女連続誘拐殺人事件の宮崎勤死刑囚
幼女連続誘拐殺人事件の宮崎勤死刑囚
 死刑になるために殺人を犯したという土浦事件の金川真大死刑囚(既に執行)や、死刑を望むと法廷で一貫して訴えていた小林薫死刑囚らと接して、死刑が世間で思われているように罪を償うことになるのかについては、疑問も感じてきた。個々の事件、個々の死刑囚において事情は全く違うし、そういう具体的な死刑囚の実情から離れて死刑制度の賛否が論じられることには常に違和感を抱いてきた。

 今回の瀬戸内さんの発言にしろ、日弁連の「死刑廃止宣言」にしろ、それが死刑問題について議論するきっかけになればよいと思う。