進む憲法改正気運


 しかし、トランプ政権誕生による「アメリカの庇護の終わり」は、元来保守派が夢想してきた対米自立、自主独立、憲法改正の機運を、たちまち高めることになるのは自明である。これは日本にとって大きなチャンスと捉えることができる。「日本はアメリカの属国だ」などと様々な方向から揶揄され、自嘲気味に日本人はそう自らを呼称してきた。そして戦後70年以上、この国の保守派・右派は、常に日本側からの努力によって「その属国の鎖」を断ち切ることを夢想していた。

 が、その「属国の鎖」は、日本側からの努力ではなく、アメリカ側からの唐突の終焉によって断ち切られるだろう。「とりあえず日米同盟を強化し、漸次的にわが方の自主的防衛力を高めていく」などと悠長なことを、親米保守の多くは思っていた。だが、そんな夢想はもう通用しない。

 日本は、対中(対北朝鮮)抑止力を自前で(どの程度を自前で用意するのかは不明だが)早急に準備し、政治も外交もアメリカに頼ったり、アメリカの庇護を求めることなく、自分の意志で決めることを強いられる時代に突入するのだ。繰り返すように、これは困難な道だが、しかし長期的には日本や日本人にとって乗り越えるべき試練なのである。

 当然、トランプ政権が誕生しても、現実的には議会や共和党穏健派との協力は不可欠なので、これまでの言動が軟化する可能性は十分にある。だが、明らかに大きな方向として、トランプ政権下、アメリカは日本への関与を減らすだろう。「中国が攻めてきたから助けてほしい?知ったことじゃない。自分の国は自分で守れよ」と、トランプならそう一蹴してはばからないだろう。

 もう北朝鮮のミサイル発射にも、中国の海洋進出にも、あらゆる外交課題について日本はアメリカに頼ることはできない、と考えて臨むよりほかない。日本の後ろにもうアメリカは無いのだと覚悟するよりない。もう与野党で馬鹿な議論、誹謗合戦をしている暇はない。日米同盟を経済的な損得で考えることも難しくなった。挙国一致でアメリカを頼らない「自主防衛」の構築を、たとえ防衛費の負担が多かろうと、急がなければならない。

 しかしこれは、当たり前のことなのだ。自分の国のことを他国に憚らず自分で決め、自分で守るのは、トランプ(大統領)に言われることなく、自明の理屈なのである。

 アメリカに頼って、アメリカに守られながら生きる日本の時代、つまり「戦後」は、2016年11月9日のきょう、終わったのである。

(2016年11月9日 Yahoo!ニュース個人「だれ日。」より転載)