中国は暴言吐いて猛反発


 仲裁裁判で中国が一方的に造成した建造物等の取り壊しを求めなかったことに対し、一部からは「踏み込みが足りない」との指摘もあるが、取り壊しの指示に関しては仲裁裁判所の範疇を超えるものであろう。判決内容は、むしろ驚くほど踏み込んだものであり、裁判所はできうる限りの十分な裁定を下したと言うべきだ。

 仲裁裁判所の裁定に異議を唱えることは許されておらず、これが最終決定であることも考えれば、裁定がいかに重大かつ決定的な意味を有することか、そのことの深刻さを一番よく理解しているのが中国であろう。

 彼らは、当初から仲裁裁判による解決を拒絶しており、当然のことながら、この判決にも激しく反発している。中国外務省は十二日、「法的拘束力のない判決を受け入れることはない」 「中国の権利を著しく侵害した」とする声明を発表、中国政府も「南シナ海における活動は二千年以上の歴史がある」と主張した。

 習近平国家主席も同日、EUのトゥスク大統領との会談で「裁定に基づくいかなる主張や行動も受け入れない」と述べた。中国政府は一体となって絵に描いたような横暴、法の理念を覆す発言を繰り返す。

 七月十三日付の朝日新聞にコメントを寄せた北京大学国際関係学院の帰泳濤副教授は〈裁判で争う問題ではない〉と題し、次のように述べている。

〈中国には、領土問題について歴史的に欧米主導の国際法体系から「被害を受けた」という潜在意識がある。中国は近代史の中で領土や権利を失ってきたが、いずれの場合にも条約があり、「合法的」とされてきた。既存の国際法が形成される過程で、中国の意見はほとんど反映されなかった〉

 中国の強硬姿勢の背景にある思想が凝縮されているではないか。つまり現在の国際社会で遵守すべき国際法は、先んじて先進国となった欧米に有利な内容であり、後発の中国には不利なものだから受け入れないというのだ。

 だが、中国は国連海洋法条約(UNCLOS)を批准した。批准したからにはそのルールを守らなければならないというのが、私たちの原理原則である。批准によるメリットを受けながら、一方で自国に不利な部分のみ無視する勝手は許されない。中国はそうした西側陣営の基本的価値に真っ向から挑戦しているのである。