“無法者国家”そのもの


2010年10月、中国で拘束されていた社員が解放された
ゼネコン「フジタ」の本社には多くの報道陣が集まった(松本健吾撮影)
 中国との価値観の闘い、国際法を守る側と破る側との究極の対立は、しかしいまに始まったことではない。これまでも中国は、“無法者国家”の振る舞いを見せてきた。それが明らかになったのが二〇一〇年だった。

 いまさら指摘するまでもなく、中国はWTO加盟国である。加盟国として中国は、海外からの投資をはじめ、多くのメリットを享受してきた。

 にもかかわらず、中国は為替操作や鋼管にかけていた反ダンピング関税など、ルールを無視したWTO違反を繰り返している。

 そうしたなかで二〇一〇年、尖閣沖中国漁船衝突事件のあと、中国は在中日本企業・フジタの職員を拘束しただけに留まらず、レアアースの禁輸を発動した。尖閣諸島は自国領だと主張する中国漁船が、海保の巡視船に体当たりで突っ込んできたうえ、船長を拘束した日本政府に抗議するために、事件とは無関係の企業社員を拘束し、加えて中国が独占しているレアアースの禁輸を宣言したのである。明らかなWTO違反である。

 その時その時で、国際法など容易に破り捨てるのが中国である。事実、同件はのちに明確なWTO違反が確定している。

 中国の利己主義は国際法違反の行為を生むだけではない。歴史の解釈にも同様の現象が生じている。中国が近現代において欧米先進国から被害を受けた、という被害者意識を強く抱いていることは、先述の北京大学帰副教授のコメントが示すとおりである。

 中国は自身を被害者だと言い募るが、自身が加害者であることには口を噤んでいる。

 チベットもウイグルも、もともと中国の一部などではなかった。それを力ずくで奪ったのが中国共産党である。もともとの民族の主張を尊重すべきだというのであれば、中国はチベットとウイグルの人々が有していた国土を放棄すべきであろう。

 また、南モンゴル(現在の内蒙古自治区)は米英ソ三国のヤルタ会談で中国に属すると決められた。南モンゴル出身の楊海英静岡大学教授は、このヤルタ協定こそ、南モンゴル人の悲劇の元凶だと語る。仮に、中国が先んじて先進国となった国々のルールに異議申し立てをするのであれば、現在の内蒙古自治区の独立をも了承すべきだろう。

 中国はしかし、そのようなことは決してしない。彼らは自国に都合の良いところだけをつまみ食いするように利用するだけである。