司令官を“国替え”


 これに対し、成都軍区出身の田氏らが猛反発した。方針が決まってからも決定を覆そうとして、ほかの軍長老と連携して活動をしたことが問題視されたという。汚職よりも、習氏に逆らったことが失脚の本当の原因といわれている。田氏の拘束はほかの幹部に対し、「中央の指示に従え」という見せしめ効果を狙った側面もある。

 また、習指導部が任命した新しい戦区の司令官もサプライズ人事だった。五人の司令官のうちに四人もAからB、BからC、CからAといった形で“国替え”させたのである。「上官とその部隊を強引に切り離すことが狙いで、現場を信用していない表れだ」と指摘する声がある。

 ある元軍幹部は、現在の軍内の上将クラスのほとんどが郭、徐両氏に登用された幹部で、習氏は彼らを信用していないが、ほかに使える人材が手元にいないため、「このような形で使うしかない」と説明した。しかし、「こんな無茶苦茶な人事をすれば、現場の志気が低下するに違いない」とも指摘した。

リストラされた将兵たち


 昨年末頃から、「このままでは解放軍は共産党の軍隊でなくなり、習家軍(習近平個人の軍隊)になってしまう」と危惧する声が軍長老の間で聞こえ始めた。軍内でいまでも大きな影響力を持つ江沢民元国家主席も軍長老たちと同じ意見だ、との情報もある。

 二〇一五年九月三日に行われた抗日戦争勝利七十周年の軍事パレードの際に、習主席が「三十万人の軍縮」を突然発表したことに対しても、軍内で大きな不満が噴出したという。

 軍縮案は習氏とその側近だけで決めており、軍現場への事前の根回しが不十分だったため、多くの高級将校はテレビ中継で初めて知ったという。「自分たちも削減対象なのか」と疑心暗鬼に陥り、部下から聞かれても何も答えられないなど、現場は大混乱したという。

 習氏が軍事パレード演説のなかで軍縮を発表したのは、世界中に高まる「中国脅威論」を払拭する目的のほか、自身が「平和を愛する指導者」をアピールする狙いもあった。情報が事前に外国メディアに漏れないように、極秘扱いにしたという。

 削減される三十万人の中身について、習氏に近いとされる元陸軍少将の徐光裕氏が中国メディアに対し、各軍区の陸軍を中心に二十万人の将兵のほか、医療、通信、芸術、宣伝工作団など計十万人を加えると説明した。国営新華社通信が配信した解説記事では、三十万人の人件費は年間約六百億元(約一兆二千億円)で、浮いた金は兵器・装備の一層のハイテク化に使われると説明したが、リストラされた将兵たちの処遇には言及していない。