削減対象となる高齢の陸軍将校らの再就職は難しい。それだけではなく、中国では近年、復員軍人に対する社会保障も不十分で、地元政府の財源不足のため復員軍人手当を支給しない事態も各地で起こり、元軍人による抗議デモが頻発している。「政府は私たちの面倒を見てくれるのか」といった軍現場での不安の声が多いという。
(ロイター)
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 軍掌握を狙った習近平氏による強引な軍改革がさまざまなハレーションを起こし、組織の機能不全をもたらして指導部への不満を募らせた。最近になって、それが外国への挑発行為にも繋がったという。

 軍改革実施後、南シナ海で中国海軍の艦船がフィリピンやベトナムの領海などに侵入し、これらの国の軍艦と対峙することが増えている。六月上旬には、中国が領有権を主張し、インドの実効支配下にあるインド北東部アルナチャルプラデシュ州にも二つの中隊(約三百人)の中国軍兵士が侵入した。数時間後に中国国内に戻ったが、インド軍が一時、戦闘準備態勢に入るなど緊張が高まった。

 ほぼ同じ時期の六月九日には、中国の軍艦がロシアの軍艦とともに尖閣諸島沖の接続水域に侵入した。これらの挑発行動について、中国国防省は国内外のメディアの問い合わせに対し、「関連する報道を注視している。中国の主権範囲内での行動なので問題はない」といった趣旨のコメントを発表した。

 軍に詳しい中国人ジャーナリストは、「国防省のコメントにわざわざ『報道を注視している』という文言が入っていることは、国防省が承知した計画的な軍事行動ではないという意味だ」と指摘し、「いずれも現場の判断のはずだ」と主張した。

軍の暴走を黙認する習近平


 いま、南シナ海問題が国際社会の焦点となったことで、担当する南海艦隊や南部戦区が注目され、最新兵器も予算も優先的に配分されることに対し、ほかの部隊の間で不満が高まっている。こうしたことから、自らの存在感を示すために勝手に挑発的な行動をとったといわれる。 

 軍現場による度重なる他国への挑発行為は、「中華民族の偉大なる復興を」といった民族主義を煽るスローガンを掲げる習政権の政権方針と一致していることから習政権は黙認する側面があり、そうした風潮が軍の強硬姿勢をますます助長する結果となった。

 南シナ海問題をめぐる仲裁裁判所の判決で中国が全面敗北となったことを受け、軍内の強硬主張はますます台頭し、今後、さらなる挑発行為に出る可能性もある。尖閣問題などをめぐり、日本は中国外務省との交渉だけではなく、軍改革で統率がとれなくなりつつある軍の暴走にもしっかりと備える必要がある。