国務省のメールの場合、将来的に一般への開示義務がある。「楽だったから」というクリントン側の主張する理由は、不十分であるとアメリカ国民は感じたのだろう。「公開するのがまずい何かがあったのかもしれない」という疑惑は最後までぬぐえなかった。特に夫であり、元大統領のビル・クリントンとともに運営する「クリントン財団」をめぐる不透明なカネの流れとメール問題との関連で、夫妻そろっての「ダーティーさ」がさらに目立つ形になってしまった。
クリントン氏
クリントン氏
 金融業界などとの親密な関係が選挙戦の最中でも何度も問題視されてきたほか、テレビカメラの衆人環視の中で気絶するなどの健康不安もあった。

 さらに、クリントン側の選挙戦術がまずかったのではないかという指摘もあがりつつある。一般投票の数で勝って、選挙人の数で負けるというのは、選挙戦術が甘かったといわざるを得ないためだ。トランプは、それまでクリントンが確実に勝つといわれていたペンシルベニア、ミシガン、ウィスコンシン3州をひっくり返した。特に製造業が目立つ地域ではトランプがうまく得票を重ねた。結局、この3州での逆転が雌雄を決する形となった。

 クリントンは選挙に必ずしも強い候補ではない。2008年の民主党の予備選でオバマに競り負けたほか、今年の民主党予備選もスキだらけだった。クリントンは実際の予備選開始前の選挙運動である「影の予備選(シャドー・プライマリー)」の段階から、世論調査で他の候補予定者を大きくリードしてきた。圧倒的な資金力と組織力で今回の選挙は勝てると予想されていたが、実際蓋を開けてみると、予備選ではバーニー・サンダースの追い上げで独り勝ちムードは吹き飛んだ。本選挙でも“型破りの敵役”であり、あれだけひどいレベルの候補者だったトランプに対しても、クリントンは勝てなかった。そもそもクリントンは候補者として弱かったのかもしれない。

 反実仮想をしてみたい。もし当選したとしても、クリントン政権の政治的状況は厳しく、何とも言えない膠着状態が予想されたのではないか。そもそも、クリントンがもし競り勝っていても、選挙直後の高揚感は全くといってなかっただろう。