約束した「変化」の実現は難しいのでは


 そして、トランプ次期大統領にとっての最大の課題は、自分を当選させてくれた支持層との関係である。国内では選挙期間中のトランプの発言とは裏腹に、かつて鉄鋼業や製造業、農業で栄えた町が、これまでと同じ産業で再活性化できる可能性は少ない。国内インフラ整備には政府予算の投入が必要になるが、政府への歳入を増やすためには、増税がやむを得ない場合もあるが、これは「減税」を掲げているトランプ氏の政策と真逆になる。また対外的には「限定的関与」を謳っていても、それがいかに「言うは易く、行うは難し」かは、オバマ政権の8年間をみるだけでわかる。トランプ氏は9月の外交政策に関するスピーチで、「自分が大統領になったら、米軍幹部に対して、IS壊滅のための作戦を30日以内に提出するように要請する」といったが、ISやかつてのアル・カーイダで壊滅させることができる計画を30日で作れるようであれば、オバマ大統領やブッシュ前大統領が既に作らせ、実行に移しているだろう。
 つまり、トランプ次期大統領が選挙期間を通じてアピールしてきた政策のかなりの部分は、そんなにすぐに変えることができないものばかりだ。しかし、トランプ氏はこれまで、支持者に対して「変化はすぐにやってくる」とアピールしている。支持者の期待は高いが、すぐにトランプ氏が約束した「変化」が感じられなければ、2年後の中間選挙で、今回の大統領選挙で彼に投票した支持者も、それ以外の有権者も、厳しい判断を下すだろう。

 今回の大統領選挙は初めから終わりまで「想定外」だった。今はアメリカも世界も、トランプ次期大統領が就任後、「想定外」に安定した政権運営の手腕を発揮する可能性にかけるしかないのかもしれない。