そもそも、リーダーも財務部長もいないのに、これほどお金がかかる大会を始めるということが、一般には理解されないのが、なぜ分からないのでしょうか。まずは、しっかりしたリーダーと財務部長を決めることからやらなくてはなりません。そもそも大会組織委員会には、東京都が97・5%の出資をしていて、仮に五輪開催で赤字を計上することになれば、「税金」がその穴埋めに使われることになります。普通に考えれば都民に選ばれたホスト都市のトップである小池知事がリーダーとなり、同じく都民に選ばれた都議会が厳しく監視していくというのが筋ではないでしょうか。

 五輪推進派の人たちは「レガシーはお金でははかれない」と言いますが、そういうなら、お金をかけずに「レガシー」を残す算段をすべきでしょう。金さえかければ、スゴイ施設ができるのは当たり前のことなのですから。

 国民の多くが五輪開催に賛成したのは、「世界一金のかからない五輪」と言われたからであって、これが「世界一カネのかかる五輪」だったとしたら、まるで詐欺にあったようなものです。しかも、家計は五輪開催の前に消費税10%アップの洗礼を受ける可能性があります。さらに、社会保障費も削られ、年金もカットされそうで、給料が上がらない中では「お祭り」どころではないという空気も一部には出てきているようです。

有明アリーナの完成予想イメージ(東京都提供)
有明アリーナの完成予想イメージ(東京都提供)
 さらに怖いのは、五輪が終わった後のこと。五輪が商業主義化した1984年以降、五輪を終えた国は、必ずといって良いほど不況に見舞われています。巨大な公共投資が閉会式とともに消え、財政の大盤振る舞いのツケだけが残るからです。東京五輪も、森記念財団・都市戦略研究所の試算では開催までに延べ121万人の新たな雇用を生み出すとのことですが、逆に言えば、東京五輪が終わるとこの雇用も消えるということです。

 五輪が終わって不況に陥るだけでなく、ギリシャなどはアテネ五輪のツケで経済破綻までしています。ブラジルなどは、なんと五輪前に不況に陥ってしまっています。

 そんな中、唯一不況にならなかったのはアトランタオリンピック。なぜなら、アメリカでは1990年にIT革命が起きて、その勢いが強くてオリンピックの落ち込みがカバーされたからです。ちなみに、アトランタオリンピックは1996年に開催されましたが、アメリカではその前年の1995年にマイクロソフトがWindows95を販売し、Amazonがスタートしています。さらに、1998年にはGoogleが登場。こうした次世代産業の快進撃がオリンピック不況をカバーしたのです。

 翻ってわが国を見ると、残念ながら日本には、落ち込みをカバーしてくれそうな次世代を担う成長戦略がありません。泥縄式で大阪万博を誘致するなどと言っていますが、そんなことではカバーしきれないでしょう。だとしたら、終わった後のことも考えて、なるべくコンパクトな五輪にしておくべきでしょう。

 山高ければ、谷深し。五輪に多額のお金をかければかけるほど、宴の後の支払いも大きくなる。いま、不動産業者では「オリンピックの崖」という言葉がささやかれていて、崖に落ちる前に儲けられるだけ儲けておこうというのがコンセンサスになっているようです。けれど、五輪で儲けられない私たち庶民は、いっせいに崖から転がり落ちそうです。だとしたら、今から五輪後の不況に備え、浮かれず家計の紐を引き締めておきましょう。