第二次世界大戦後、アメリカは最大の強国として世界の安全保障を担い、アメリカ軍をヨーロッパや日本等に駐留させてきたし、戦後、マーシャル・プラン、ガリオア・エロア資金などによってヨーロッパや日本を経済的にも支援してきたのだった。そのせいもあって、第二次世界大戦の敗戦国である日本、ドイツ、そしてイタリアも戦後、力強い復興を果したのだ。

 アメリカは今もGDPナンバーワンの経済大国だが、10年前後で中国のGDPがアメリカのそれを抜くとされているし、1人当りGDPでも日本が1980年代後半にはアメリカを抜くに至っている。アメリカはいまだに強大だが、唯一の経済大国ということではなくなってしまった。

トランプ次期米大統領と会談する安倍晋三首相
=11月17日夕、ニューヨーク(内閣広報室提供)
トランプ次期米大統領と会談する安倍晋三首相 =11月17日夕、ニューヨーク(内閣広報室提供)
 おそらく、トランプはこのあたりのことを強く意識し、政治的には同盟国である日本やドイツとの経済面での競合を明確に認識しているようだ。競争相手である日本に高いコストをかけ、いつまで米軍を駐留させるのか、もっと日本に費用を負担させろという主張はごく自然にこうした認識から生じてきたものだと思われる。また、日本がアメリカの牛肉に高い関税をかけているのだから、日本車の輸入にも同様の関税をかけるべきだという主張も同じ認識から出てきたのだろう。

 トランプが選挙中に主張してきたことは、彼が閣僚たちを任命し、大統領に就任すればかなり変わる可能性もあるが、例えばTPPからの離脱等は大統領になっても変わらないと彼自身が明言している。正確な予測は難しいが、彼が国内の雇用等を優先し、相当保護主義的な政策を実行する可能性はかなり高い。
 
 また、どちらかというと輸出にプラスになるドル安を指向し、日本が意図的に円安を誘導していると非難している。日本の円安は積極的な金融緩和が継続された結果なのだが、為替レートをかなり意識した政策だったのだと考えているのかもしれない。 

 いずれにせよ、国内の雇用を重視し、アメリカ・ファーストを掲げる新大統領が、日本やドイツを貿易政策上の競争相手として強く意識していることは確かなのだろう。11月17日の安倍晋三首相とトランプの会談は友好的に行われたようだが、今後、トランプ大統領が貿易面でどんな対日政策を取ってくるかは今のところはっきりしていない。

 日米は1980年代貿易摩擦で対立をしていたが、トランプはこうした時代の対日観を引きずっているとの見方もあり、予断を許さない点も少なくない。トランプ次期大統領の為替政策・貿易政策をしっかりと見守っていく必要がある。