プレッシャーに弱い人は、気が小さいというより、それだけ素直で善人とも言えなくもない。自信家、傲慢、上昇志向の強い人は、そんな発想をしない。日本における相撲の伝統の重さ、横綱の地位の意味を幼い頃から肌で感じている日本人・稀勢の里だから感じる畏れや不安もあるだろう。モンゴルから来た力士たちはそうした目に見えない重さや伝統より、出世して地位をつかみ財を得ることに気持ちが向いている。だから稀勢の里が感じるようなプレッシャーが入り込まないと言えるかもしれない。それだけに、稀勢の里には何とか重圧を乗り越えて、優勝と綱取りを果たしてほしい。

稀勢の里(右)に小手投げで敗れた鶴竜
=11月23日、福岡国際センター
稀勢の里(右)に小手投げで敗れた鶴竜 =11月23日、福岡国際センター
 不安を作り出すのはどこだろう? 不安で動かなくなるのは体だが、不安を生み出すのは頭だ。頭、つまり頭脳。頭でモノを考え始めると、実はネガティブな方向に考えが向かいがちだ。最近はスポーツの世界でも「よく考えろ」と言われるが、あれは両刃の剣で、咄嗟の判断はからだでしている、だから「考えるな」と言った方が自然な実力を発揮できる。

 稀勢の里には、余計なことを考えない日常を過ごして初場所に臨んでほしい。あれだけの実力を備えたのだから、相手力士の研究や戦略は必要ない。余計なことを考えるくらいなら、適量のお酒を飲んでさっさと寝る。それくらいの開き直りが功を奏すだろう。

 2カ月後には待望久しかった「日本人横綱誕生」のニュースが流れる可能性がある。優勝もなしに綱取りの可能性が浮上した、こんな幸運はないのだから、稀勢の里にはこの流れに乗ってほしい。