際立つのは中国資本と共に押し寄せる中国人である。直近では2014年3月のクリミア侵攻後、国際社会の経済制裁を受けたプーチンはアジア重視政策に舵を切り、極東ロシアに大量の中国人労働者が流入した。

 もともと産業が少ない極東ロシアの人口は最盛期より150万人も減少し、現在は620万人ほど。うち20%を中国人が占め、その一部が国後、色丹に流入していると見られる。

 北朝鮮との関係も密接だ。2013年に北朝鮮の羅津港とロシア極東のハサンが鉄道でつながれ、毎年2万~3万人の北朝鮮の労働力がビザなしで極東ロシアを行き来する。公式記録でサハリン州全体に2000人の北朝鮮人が常住し、その一部が北方4島に流れている。

 前述の国後・色丹の外国人600人という数は少ないと思われるかもしれないが、両地域を合わせた総人口は約8000人足らず。外国人が人口の1割近くというのは相当な比率である。北方4島に潜む闇は中国と北朝鮮だけではない。

 今年4月下旬、プーチン大統領と国民との直接対話で、色丹にある水産加工工場「オストロブノイ」の従業員が、約1000万円の給料未払いを訴えた。激怒したプーチン大統領は当局に捜査を命じ、姿を消した創業者が国際指名手配された。

 一連の報道は、北方4島の水産加工業を中心とした経済がマフィアに牛耳られ、腐敗汚職の温床と化していることを示唆する。北方領土返還交渉を経て、日本企業が下手に共同開発などの甘言に乗れば、大切な資産を根こそぎ奪われるだろう。

●なかむら・いつろう/1956年島根県生まれ。学習院大学法学部政治学科卒業。モスクワ国立大学およびロシア科学アカデミー国家と法研究所に留学。筑波大学人文社会系教授(国際総合学類)。東京大学総合文化研究科非常勤講師。著書に『シベリア最深紀行─知られざる大地への七つの旅』(岩波書店刊)など。

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