撮影:生津勝隆
撮影:生津勝隆

人間ではほぼ不可能な
自動運転用のソフトウェア開発


 このソフトウェアに入る走行アルゴリズムの開発は人力ではほぼ不可能なゴールの無い作業だ。自動車の運転環境は、高速道路、一般道路、生活道路等によって大きく異なる。一般道路や生活道路では高速道路と異なり、交差点があり、信号があり、多様な道路標識があり、歩行者がいて、実はコンピューターではバイクと見分けがつきにくい自転車もある。一般道は各国で交通ルールも若干異なり、地域の暗黙の了解といったものもある。クルマに搭載されたコンピューターが状況判断に窮することは容易に想定される。

 そこでディープラーニングの有効性が注目されている。ディープラーニングによって学習した画像認識は、2015年には人間のエラー率より低くなったといわれる。米国を競争の場として世界中でこうした研究開発が急激に進んでいる。今年3月、Googleの囲碁AI「アルファ碁」が韓国の世界トップレベルのプロ棋士・李セドル九段に勝つなど、この分野におけるGoogleの技術力は圧倒的だ。

 ディープラーニングでは周りの人間や自動車の動きに対して、こうした状況ではこのように走り抜けるのが「最も正しい」といったことを、環境データや走行データから、自ら状況把握して学習する。人間よりも早く走行方法を最適化して、そのソフトウェアを逐次クルマのコンピューターにダウンロードする。それを販売後のクルマに対しても行うようになる。複数の対象物を同時に早く正確に認識するなど、人間には困難なこともやってのけ、結果的には、さも人間が運転しているかのごとく自動運転車が走るようになる。

 とりわけ自動運転の開発は、「人間の運転」を置き換える部分に集約され、人工知能の一つの初期的適用分野として最適である。クルマは2足走行ロボットや工事現場や荒地を走行するロボットとは異なり、まず人間が運転できる道であることを前提としている。日常生活の全てをこなすことを求めているわけではなく、交通ルールを守るという前提や、道路上で想定し得る全ての事象を認識・分析・判断対象として網羅することも課題を限定しており、十分限定的な条件設定が可能だ。

 ディープラーニングを行う際は、大量の「生データ」が必要になる。Googleはカリフォルニア州マウンテンビューに行けば誰の目にもとまる物量で公道実走試験を行い、せっせとデータを溜めこみ分析している。
 Googleが毎月公開している報告書によれば16年4月30日時点で、特徴的な形をしたSelf-Driving Carのプロトタイプ計34台がカリフォルニア州マウンテンビュー、テキサス州オースチン、ワシントン州カークランド、アリゾナ州フェニックスで走行しており、これまでの総走行距離数は約150万マイル(約240万キロメートル)に及ぶ。1週間で1万〜1.5万マイルも、「ソフトウェアがクルマを運転しておりテストドライバーは手動(足を含む)の操作レバーにタッチしていない」クルマが走行データを積み重ねている。