今季セ・リーグを制した広島勝利の要因に、野手では丸佳浩、鈴木誠也、投手では野村祐輔といった生え抜きの若手と、それぞれ思いを持って古巣の戻った黒田博樹投手、新井貴浩内野手の存在が挙げられる。数字の合計ではなく、彼らのチーム愛が戦力を倍加させ、悲願の原動力となったことは広島ファンならずとも痛感している。

 このオフの巨人の補強は、そのような魂のスイッチを入れるような目論見が込められているだろうか。単に数字の合計ではチームは強くならない。

 すでに様々なメディアがいろんな角度から指摘している。今季初めて2桁勝利を挙げた実績しかない山口は、3年総額7億円で契約と報じられている。年間平均すれば約2億3千万円強。今季年俸8500万円から一気に3倍近いアップだ。この年俸は、巨人のエース菅野智之投手とほぼ同額。入団1年目から13勝をマーク、3年連続で二桁勝利を挙げ、先発ローテーションの中心であり続ける菅野と山口が同じ評価でチーム内の人間関係はうまくいくだろうか。

入団会見でポーズを取る山口俊(左)と森福(右)。高橋由伸監督
巨人の入団会見でポーズを取る山口俊(左)と森福允彦(右)。中央で笑みを浮かべる高橋由伸監督=12月5日、東京都千代田区
 山口と陽は、巨人入りが決まって髪やヒゲなど、こざっぱりと変身した。元々はやんちゃ系なファッションが持ち味だった。髪は切っても、長年の志向はそう簡単に変わらないだろう。昨年の話だが、家内とDeNAの試合を見に行ったことがある。先発は山口だった。走者のいる場面で打席に立った山口がボテボテのサード ゴロを打った。私は走者の動きに目をやった。隣の家内が叫んだ。

 「あのバッター、どうして一塁に走らないの?」

 みると、山口は打席からほとんどそのままベンチに向かっていた。アウトはほぼ確定とはいえ、そこまで怠慢なプレーを見たことはなかったから正直驚いた。DeNAではそれが許されていた。巨人はそのような選手に菅野と同じ年俸を保障し、重要なローテーションの一角を託そうとしている。

 補強といえば、巡回投手コーチに小谷正勝コーチ、守備コーチに小坂誠コーチの復帰が決まった。いずれも指導に定評のある仕事人。30億円とも言われる補強予算のごく一部で招聘されたこれら球界の名伯楽たちこそ、本当は未来の巨人を担う人材育成に重要な役割を果たすのではないだろうか。そこを忘れていないのがせめてもの救いだ。