孫氏のブレーンでソフトバンク社長室長を務めた嶋聡・多摩大学客員教授が語る。

「孫さんは6月だけでなく、これまでプーチン大統領と複数回会談している。今年初めにも会っていたはず。ロシアはシベリア開発という課題を抱えており、その開発資金を日本へのエネルギー輸出で調達する考えがあるから、孫さんとは思惑が一致していた。

 現在、領土交渉にからんで日露の経済協力が重要なテーマになり、日本政府もロシアの提案を無視できなくなった。孫さんという1人の民間人がやってきたことが、2国間のテーマになった」

米国の“間隙”を縫った

 これまで安倍首相がロシアを訪問する際には日本の財界をあげて、大規模な経済ミッションを組んで同行した。しかし現在、企業経営者の多くは、ロシアへの投資に尻込みしている現実がある。

「ロシアへの投資には米国が目を光らせており、経済制裁破りと見られて厳しいペナルティを科せられる危険が大きい。日本の企業も銀行も恐くて事業参加に踏み切れない」(メガバンク関係者)からだ。

 また安倍政権の原発再稼働政策を財界も支持している手前、ロシアの自然エネルギーに投資することにも躊躇がある。そうした中、孫氏は米国の大統領選挙で“監視”が緩んだ間隙を縫って、経済制裁下にあるロシアに単身乗り込み、独裁的な権力を握るプーチン大統領に“直談判”した。空前の国際プロジェクトの絵を描いてみせ、いまや北方領土返還のキーマンになった。

 その行動は「海賊」と呼ばれたあの人物を思わせる。60有余年前、出光石油の創立者・出光佐三氏は、英国の経済制裁で石油メジャーさえ手を出せずにいたイランにひそかにタンカーを送り、原油を買い付けて日本に運ぶという荒技で世界をあっと言わせた。

「地球のどこかで太陽は輝き、風は吹き、水は流れる。2020年の東京五輪のとき、(4か国の)ゴールデンリングの電力で電気のトーチがつながればいいと思っています」

 孫氏は、今年9月に開かれた日本の自然エネルギー財団の記念シンポジウムで、満を持して東京五輪までの構想実現をぶち上げた。

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