それに人間側ではなく、車両側での対策もできるのではないかと考えている。自動運転のようなハイテクではなく、原始的な方法でだ。一部の人が提案しているように、高齢者はマニュアル・トランスミッション(MT)車限定とすることである。
 MT車はクラッチをつなぐ操作をしないと発進しない。つまりアクセルとブレーキのペダル踏み間違い事故は防げる。また加減速のたびにギアを切り替える必要があるなど、考えながら運転することが必須となる。考えながら運転することができなくなったら運転を控えてもらうという判断は理に叶っていると考えている。

 問題はその結果、クルマの運転に適さないというジャッジが下った高齢者の移動をどうするかだ。東京ならともかく、公共交通が限られる地方都市では、移動の自由が奪われることに等しい状況になってしまう。

 クルマを運転できなくなった高齢者の移動の足として親しまれている乗り物に、電動車いすがある。しかし日本の法律ではこれは歩行者扱いであり、最高速度は時速6キロに制限されている。これのすぐ上が時速100キロ出せる軽自動車というのは、あまりに差が大きすぎる。

 欧州で暮らす人に聞くと、現地でも認知症が原因の事故はあるそうだが、MT車の比率が圧倒的に多いので、ペダルの踏み間違いは少ないはずだ。さらに免許を返納した人にも、代わりの移動手段がいくつか用意されている。

 ひとつはさきほどの電動車いすだが、最高速度は国によって異なるものの、自転車に近い時速15〜20キロとしているところが多い。これだけで移動のストレスはぐっと減る。さらにその上には軽自動車がない代わり、それより小さなエンジンやモーターを積んだ超小型モビリティがある。

 こちらは2つのカテゴリーがあり、最高速度が時速45キロに制限された低いクラスは運転免許がなくても乗れるので、高齢者の移動手段として根強い支持を受けている。高速道路は走れないので、悲惨な逆走事故を起こす心配も少ない。遠方へ行く際には、電動車いすや超小型モビリティなどで最寄りの鉄道駅やバス停留所へ向かい、そこから公共交通を使うパターンが一般的だ。

 日本でも超小型モビリティは存在するが、専用カテゴリーが存在せず、使い勝手の良い2人乗りは軽自動車をベースとした認定制度という、中途半端なルールで運用されている。しかも原付扱いの1人乗りを含め、普通自動車免許が必要となる。免許を返納したら、時速6キロしか出ない電動車いすしかない。