中国のほうでは、カンボジアをどう評価しているのか。「人民日報」傘下の「環球時報」(2016年7月27日付)には、「世間ではフン・セン首相の夫人の先祖が中国人(海南島出身の林氏家族)であることは言い伝えられているが、それは事実だ。ある日、内閣会議が開かれているところ、フン・セン首相は突然、翌日が中国の旧正月にあたるのを思い出して急いで会議を終わらせ、家に帰って夫人の傍で正月料理の準備を手伝った。家ではかかあ天下であることを披露している」という記事が掲載された。

 カンボジアの親中姿勢は、中国がカンボジアへ巨額の援助をしているからではないか、という問いに対して、記事は、カンボジアに対する援助は日本が長い間トッブを占めており、20年間で総計30億ドルの援助があった。にもかかわらず、フン・セン首相が中国を支持してきたのは、絆が強いためだと述べる。アメリカもTPP加盟をカンボジアに持ちかけて誘惑したが、それでも功を奏することができなかった。西側と比べて中国の経済援助は無償で、カンボジアは中国人民に感謝しているという。

カンボジアのフン・セン首相=10月7日、首都プノンペン
カンボジアのフン・セン首相=10月7日、首都プノンペン
 そのため、フン・セン首相はカンボジア在住の華僑たちと良好な関係を持ち、いままで禁止されていた中国語の使用を広げるようにした。華僑たちも積極的にカンボジアの経済建設に力を捧げている。

 記事は最後にフン・セン首相の性格に触れ、彼は恩返しを知る男だと評価した。ちなみに、カンボジアはいま中国で「柬鉄(かんてつ)」と呼ばれている。「柬」はカンボジア国名の略称で、「鉄」は永遠の友達の意味である。

 記事は中国の無償援助がカンボジアに感謝されていると書いているが、筆者はやや疑問である。かつて中国はベトナムに大量の軍事的、経済的援助を行ったが、現在では敵対関係にある。

 問題の本質は、カンボジアの外交戦略にあり、宿敵のベトナムに対抗するために中国の力を必要としているからだ。言い換えれば、中国とカンボジアが互いに利用し合っているわけだ。

 カンボジアと中国は国境を接していないから、国境紛争で悩まされることがない。それに対して、ベトナムは隣国であるため、長い間、紛争が繰り返されてきた。カンボジアに言わせれば、現在のベトナムの国土の多くはカンボジアから略奪したものだという。