2つめの会談は、習近平国家主席とライス大統領補佐官の間で行われた。7月25日、習近平国家主席は訪中したライス大統領補佐官と会い、「互いに核心的利益を尊重しなければならない」と述べ、南シナ海問題で譲歩しない立場をあらためて表明した。一方で、「中国は国際秩序と規則に挑戦する意図はなく覇権は求めない」と強調した。

 ここのポイントは、「中国は国際秩序と規則に挑戦する意図がない」という習近平の意思表明である。外交上の策略であるかもしれないが、いままで習近平はどんな場合でも、このような言葉を一度も口にしたことがない。言い換えれば、「中国はアメリカをはじめとする国際秩序と規則に挑戦する意図がない」という意思表明であり、中国も一歩下がったと解することもできよう。

 仲裁裁判所の裁定が出てから、米中関係はさらなる緊張が高まることもなく、逆に歩み寄りそうな言動が見られた。全面対決はアメリカの国益に背くことになるからであり、また、オバマ政権の終わりが近づき、アメリカ人の関心は南シナ海ではなく大統領選挙に注がれている。こんなときに戦争を発動することは考えられない。

 加えて、仲裁裁判所の裁定はアメリカにとっても不利な影響が広がる恐れがある。今回の裁定は国際法上の「島」の要件を厳格化した。裁定は、島で人間集団が安定した共同体(コミュニティ)を維持できることや、外部に依存しないで経済的生活が保てることなどを
要件として示した。

 ただし、この基準を敷衍(ふえん)していけば、アメリカにとっても厄介なことになるかもしれない。中国メディアは専門家の話を引用して、「アメリカには『島』と呼ばれる領地が多くあるが、この基準で認定すれば島とは呼ばれなくなり、ただの岩礁にすぎないことになるケースが出てくる」と報道している。

東京都小笠原村の沖ノ鳥島=2005年4月
東京都小笠原村の沖ノ鳥島=2005年4月
 日本にしても、すでに国内で議論されているように、日本最南端の沖ノ鳥島の法的地位が揺らぎ、EEZ(排他的経済水域)の設定などが難しくなるだろう。だから、アメリカは、南シナ海の仲裁結果について立場を持たないと言って、曖昧な態度を示したのである。

 中国にもいくつか譲歩の姿勢があった。外電には、仲裁裁判所の裁定が出る前日に、中国は南シナ海のウッディ(永興)島に配備された地対空ミサイル「紅旗(HQ)9」を本土に移動させたという報道があった。

 また、中国とASEAN外相会議の共同声明では、関係国がこれから無人の島、礁、浅瀬などでの入植をいっさいしない義務が定められた。もちろん、これは主に中国を制約するものだ。