筆者は、南シナ海問題でアメリカに追随する日本に対する報復措置という面が強いと考えている。中国では、日本は部外者だという認識であり、それだけに余計な口をはさんで中国の邪魔をする日本を憎む気持ちが強い。

 中国政府は、仲裁裁判所の裁定について、「一部に事態をかき乱そうとする者がいた」と強く主張している。2016年7月25日、岸田文雄外務大臣と中国の王毅外相が会談を行った際、王毅は「これ以上介入を続ければ、別の意図があると証明することになる」などと高圧的な態度を見せたという。中国政府の日本に対するいらだちは、日本人が思う以上に強い。
南シナ海の南沙諸島で訓練する中国人民解放軍の海軍兵士=2016年1月
南シナ海の南沙諸島で訓練する中国人民解放軍の海軍兵士

日中戦争はいつでも起こりうる



 中国の国際問題専門家(シンクタンク)は、中国のアジア政策を「穏北、保東、争南」という言葉で説明している。以下、それぞれの説明である。

 ・穏北:北とは朝鮮半島を指し、バランスをとりながら韓国と北朝鮮との外交を展開する。「穏」は安定化を図るの意である。
 ・保東:東とは釣魚島(尖閣諸島)と台湾を指し、それを奪回することが目標である。「保」は取り返すの意である。
 ・争南:南とは南シナ海を指し、国益を確保しながらも、ASEAN諸国にも利益を残す。「争」は交渉するの意である。

 中国最高指導部は、外交政策を調整しながらアジア各国や地域との関係を維持している。上層部の詳しい情報は知らないが、前記のシンクタンクの考え方はかなり反映されていると思われる。

 1つの裏づけがある。中国外務省はいま、多くの場で南シナ海を「共同家園」(皆の家)と呼ぶようになった。たとえば、2016年3月8日に第12期全国人民代表大会第4回会議が開かれ、王毅外相が記者団の質問に答えたとき、彼は、「南シナ海は中国と周辺諸国の『共同家園』だ」と語った。

 一方、東シナ海や釣魚島について「共同家園」という言葉が使われることはない。これからも使わないだろう。なぜなら、取り戻さなければならないからだ。

 こうした中国の対外政策の違いからすると、紛争や戦争が起こる可能性があるのは南シナ海よりも、むしろ東シナ海をめぐる日中間のほうだと考えられる。

 香港・台湾の軍事専門家には、次のような中国の戦略シナリオを描く人が多い。

 尖閣諸島所有権紛争でアメリカを介入させないように、中国はまず海上武装警察という準軍事力を使うだろう。海上武装警察の海警船には銃器・火砲などの武器が装備されているので、戦闘力が結構ある。