中村俊輔ほど大きなニュースになっていないが、元日本代表の岩政大樹選手が、J2のファビアーノ岡山から東京ユナイテッドに移籍するというニュースもあった。東京ユナイテッドは、関東社会人リーグ1部所属のチーム。日本サッカーの頂点であるJ1から数えて5番目のリーグを岩政大樹は選んだ。いわば、2部から5部へ。

 「多くの方から『なぜ?』と聞かれました」と、岩政自身が、『BEST TIMES』というネットマガジンの「岩政大樹の現役目線」というコラムでも詳しく心情を綴っている。日本のスポーツ選手が書いた文章でこれだけ深く厚く心のひだを表現したものも少ないと感じた。興味があればぜひご一読をお勧めする。その中で岩政は、こう書いている。

 「『自分』が輝くことを1番に置いた上で次に『チーム』がくる。そういう世界だと理解しています。しかし、僕は順番を逆さにしていました。1番に『チーム』や『チームメイト』を置き、次に『自分』にしていました」



 「J1でプレーできなくなったらJ2、J2でできなくなったらJ3やタイリーグ、それでもダメなら引退。そうした選択をしていくと、いつも『自分』のことに目が行きがちになります。(中略) しかし、『チーム』や『チームメイト』に基準を置いていると、違うものが見えてきます」



 こうした発想や姿勢は、岩政選手自身が自分の中で育て目覚めてきたものに違いない。だが、そうした発想に導く空気や土壌がサッカー界にはあるのではないか。

試合前に談笑する沼津・FW中山雅史(左)と 横浜FC・FW三浦知良
=2016年4月24日、横浜市
試合前に談笑する沼津・FW中山雅史(左)と 横浜FC・FW三浦知良 =2016年4月24日、横浜市
 開幕日に50歳を迎える三浦知良選手が今年も横浜FCと契約、現役続行が発表された。引退を撤回して現役復帰したゴンこと中山雅史も秋には50歳、今季J3初参戦の沼津で現役を続ける。こうした選手のスピリットは、広告代理店が絵を描いたとばかり思っていたJリーグ構想に、机上の計画を超えた熱と魂を加えた。サッカーを愛する指導者と選手たち自身が魂を注ぎ、書き加えた歴史の積み重ねこそが、人を育て、サッカー界を育てるのだと教えられる。中村俊輔があえて愛着のあるマリノスに決別して表現しようとする思いもそこに通じるのではないだろうか。