例えば、前回この連載でも登場した朝日新聞編集委員の原真人氏の新刊『日本「一発屋」論』(朝日新書)はその典型である。安倍政権の経済政策は、金融と財政の一体化という名目での「財政ファイナンス」であり、「意図的にバブルを起こそうとする試み」である。低成長が常態になった日本経済で、日銀によってマネーでじゃぶじゃぶにする政策を行えば、バブルが生じてしまう。そしてバブルはやがて破裂するので、経済への反動は深刻化する、だろうというものだ。バブルの破裂を、原氏の著作ではハイパーインフレや財政破綻などとしても表現されている。

 この原氏と同様の意見を、経済学者の浜矩子氏と評論家の佐高信氏がその対談『どアホノミクスの正体』(講談社+α新書)の中で語っている。その対談の一部はネットでも読める。

浜矩子 アベノミクスは、すでにして行き詰まっていると言えます。屋上屋を重ねるように場当たり的な金融政策を続けているわけですが、いつそれが崩壊してもおかしくない。「アホノミクス」、いや「どアホノミクス」と言うべき状況です。

 浜氏によれば、アベノミクス(日銀の金融政策)は、極端な国債の買い取りによりマネーを無制限に供給する政策である。この無責任な政策は、実体経済と乖離したバブルを生み出し、やがて破綻することが目に見えているものだという。

 浜氏は経済評論家の高橋乗宣氏と共著で、21世紀に入ってから(リーマンショックが起きた2008年以外)毎年のように、世界や日本の経済危機を予測する書籍を出していることでも著名だ。今年(2017年)の経済危機を予測する高橋氏との共著はまだ出されていないのが、筆者の少し心配するところではある。それだけの人気経済学者でもある。

 さて原氏も浜氏も、それぞれ「金融岩石理論」的な主張だといって差し支えないだろう。この「金融岩石理論」が、理論的にも実証的にも成立しがたいことを、丁寧に解説した良書が出版された。原田泰・片岡剛士・吉松崇編著『アベノミクスは進化する』(中央経済社)がそれだ。

 現在の先進国(日本、ユーロ圏、イギリス、アメリカ)は、それぞれインフレ目標を設定していて、その目標値を大きく上回るようなインフレになれば、積極的に金融引き締めにコミットするように公約している。どんなに経済が過熱してもその結果としてインフレが目標値以上に高騰すれば、やがて中央銀行が金融引き締めに転じるであろうと、多くの市場関係者たちが予測し、またはすぐに予測できなくても次第に学習することで、自分たちの経済上のポジションを金融引き締めに適合したものに変更する。これによって自己実現的に経済は金融引き締め型に転換していく、というのがインフレ目標の重要なポイントだ。

 簡単に言うと、人々の予測をコントロールしていく政策である。人々の多くは、ときにヘンテコな予測をする人がいても、よほど非合理的な思考に陥る人でもないかぎり、時間をかければほとんどの人が経済の状況(ここでは中央銀行の引き締めスタンスの予測)を正確に把握するだろう。中央銀行がインフレ目標から乖離したら引き締めるといっているのは嘘だ、と思い込む人は極めて少数だ、という意味である。