さて、2017年1月の籾井会長任期満了にともない、経営委は次期会長選考を進めた。籾井会長は、就任以来、「国際放送については政府が右ということを左とは言えない」「慰安婦問題は政府の方針を見極めないとNHKのスタンスは決まらない」「原発報道はむやみに不安をあおらないよう、公式発表をベースに」など、NHKをまるで政府の広報機関とみなすかのような暴言を繰り返し、報道機関や視聴者から厳しい批判を浴びた。

 あわせて、一連の暴言について国会にも参考人招致され、議員の質問を浴びた。質疑の大半が会長個人の資質にかかわるもので、放送文化の発展に寄与する質疑応答とは無関係であった。このように自主・自立・自律を欠如したまま3年もの間、ジャーナリズムのトップに立つNHKを代表してきたことは、NHKの消すに消せない「歴史」であると思う。
2014年2月、質問に答えるため挙手するNHKの籾井勝人会長(左)。右はNHK経営委員会の浜田健一郎委員長=国会・衆院第1委員室(酒巻俊介撮影)
2014年2月、質問に答えるため挙手するNHKの籾井勝人会長(左)。右はNHK経営委員会の浜田健一郎委員長=国会・衆院第1委員室(酒巻俊介撮影)
 12月に入ると籾井氏の再任が難しいことが新聞各紙で大きく取り上げられた。12月2日「朝日」は朝刊1面トップで「籾井NHK会長再任困難/経営委員の同意足りず」と4段見出しで伝えた。その後、いくつかの新聞も「再任困難」と報じた。確かに、それまで籾井氏が続投に意欲を見せているとの報道があったからか、「困難」となったのであろう。その目線は籾井氏や首相のお友達と言われる経営委員からのもので客観的な報道姿勢ではない。そのように朝日新聞の見出しに違和感を覚えた私は、朝日は同氏の続投を願っているのかとさえ感じてしまった。

 報道に先だって、NHKの最高意思決定機関である経営委は、10月11日に「会長指名部会」を開き、(1)公共放送としての使命を十分理解している、(2)政治的に中立である、(3)人格高潔であり説明力に優れ、広く国民から信頼を得られる、(4)構想力、リーダーシップが豊かで業務遂行力がある、(5)社会環境の変化、新しい時代の要請に対し、的確に対応できる経営的センスがある、と5項目の資格要件を決め、今後委員から候補者を募り、年内に次期会長を決める方針を明らかにしていた。その際、現会長の籾井氏も候補者の一人として議論するとした。

 この「資格要件」は、それぞれが抽象的とはいえ一般論として容認されうるものだが、3年間も経営委員会から注意を受けつつ、NHKを代表する地位にいた籾井氏はその要件を満たしたとは思えない。実は籾井氏の選任を決めた前回の会長選考でもほぼ同じ6項目の要件が示され、その選考過程で籾井氏を強く推薦したのは当時委員だった石原進経営委員長なのである。