NHKの石原進経営委員長
=10月17日、東京・渋谷
 今回、石原委員長の下で進められた次期会長選考には、約3年間に度重なる暴言や失言、そして経営委から籾井氏に「注意」が3度もあったことは、記憶に残る事実であり、NHKの歴史に刻まれた「汚点」だ。にもかかわらず、現在の経営委には自戒も自責の念もない。その上、少なくとも失言や強引な理事人事などのこの3年を検証し、次期会長選任理由やその背景を明確に説明することを欠いたままでは、汚点をぬぐい、信頼を回復するには至らないだろう。それでも現在の受信料支払い率は7割を超える。年金よりも高い支払い率に安穏としている経営陣、政府はいつの日か強烈な批判を受けることになるかもしれない。それ以上に人口減少が進むなかで受信料収入は値上げや新たな受信料対象を見つけなければ、番組制作体制を維持できなくなることは明白ではないか。

 いま、NHKの将来像やあるべき放送体制を、国会審議だけでなく市民をも巻き込んで探求する必要に迫られている。であるからこそ、今回の会長選考は過去への反省を忘れ、未来への理念も思想も示されないままでは、視聴者の利益を少しも考慮しない姿勢との批判は避けられないだろう。

 経営委員に政府、とりわけ安倍首相の「お友達」委員が多いと多くのメディアが指摘しているように、委員会は安倍政権の利益代弁者であり、まさに籾井氏の政治姿勢である「政府が右ということを左とは言えない」とぴったりと重なるといえる。だからこそ、次期会長選考にあたっては透明な手続きの下で、ジャーナリズム精神を備え、政治権力に毅然と対峙できる人物が選任されることを期待していた。

 しかしながら12月6日、現在経営委員で元三菱商事副社長の上田良一氏が後任に決定した。会長は4代続けてNHK外部からで、経営委員からは異例の登用だという。経営委は上田氏選出までの経過を説明すべきだ。あわせて上田次期会長と委員会は、失態が続いた籾井時代の3年間を検証し、経営委の見解だけでなく、委員一人ひとりが明確な言葉で表明することが不可欠である。間違っても、籾井体制の継続を語ることがないよう祈りたい。NHK組織内でジャーナリズムに邁進している良識派を今以上あきらめさせてはならないからだ。