退任が決まった籾井氏だが、経営委の次期会長選びが進む中で来秋から受信料を月額50円値下げする意向を示していた。しかし経営委はNHK執行部つまりは籾井氏サイドの提案を、11月22日に見送ることを決定した。毎日新聞は翌日の朝刊第2面に「受信料下げ見送り決定 NHK経営委 会長再任より困難」と3段見出しで伝えた。同記事の解説では、認められなかったのは施行部の値下げ案に具体的な裏付けが見られなかったためだとし、議論の進め方が拙速だと批判した。

 1968年5月、テレビ受信契約が「カラー契約(月額465円)」と「普通契約(月額315円)」(白黒受信契約)に分割された際にラジオ聴取料(月額50円、なおそれまでテレビ・ラジオあわせて月額200円)が撤廃された。カラーテレビが右肩あがりで普及が進んでいたことがその背景にあったが、今回の値下げにはそうした将来の財源増はなく、ただ余剰金が出たからというもので、ここから番組制作費の増額とか番組保存・公開への利便を拡充するといった方策にあてるといった放送文化の向上への意向が見られないのは、きわめて残念なことである。

 そもそも、NHK受信料契約について社会の多くが理解しているのか。その契約自体があいまいで、当のNHK、国、国会が具体的な説明を回避してきた歴史がある。受信料を支払う市民がNHKに物申す手段があるのかといえば、投書やメールあるいは電話を使うくらいしかなく、受信契約を結んでいる(多くの市民はその意識がない)ものの、通常の契約関係に見られるようなコミュニケーション回路は閉ざされている。

 回路を開く努力を、そして具体的な方策を明示できなければ、「支払い拒否」は人口減以上の速度で拡大することになるだろう。このような危機を回避するために、NHKはもちろん行政も国会も、この国における放送のあるべき将来像を早急に見出すべきだろう。通信分野は技術発展に併走するかのように多くの市民に受け入れられているのだから。