「貧困騒動」とは、NHKが貧困に喘ぐという切り口で紹介した女子高校生が、1万数千円レベルの画材を手にし、遊興に費やす余裕のある生活水準であることがSNSで特定されて炎上した騒動だ。騒動の拡大により、女子高生への誹謗中傷も確認されたが、批判の発端は「日本は経済格差の広がる悪い国ですよ」というNHKの思惑を感じとったネット民からの反発と、同じベクトルからの「捏造批判」であった。

 NHKは「相対的貧困」という言葉で「捏造」を否定する。進路において学費その他を気にしない豊かな世帯と比較してのことのようだが、それに納得するネット民(民=ユーザー)は多くない。いや、周囲の主婦にも確認したが、子供の進路を考えるとき、経済的理由に頭を悩ませている世帯の方が主流派なのだ。

NHKの籾井勝人会長=2016年1月7日、
東京都渋谷区のNHK放送センター
NHKの籾井勝人会長=2016年1月7日、
東京都渋谷区のNHK放送センター
 NHKが発表している職員の平均年収は1150万円だが、残業代や諸手当を含めると1700万円を越えると、元BPO委員でジャーナリストの小田桐誠氏は指摘する。一方、平成25年の国税庁の調査によると、一般企業のサラリーマンの年収は414万円だ。つまり庶民の3~4倍の収入を得ている貴族のようなNHK職員からみれば、大半の日本国民は貧困に喘ぐ貧しき下々とでも見ているのだろう。だから、政権を批判し、そんな日本と歴史を卑下するのではないか。

 事実、Eテレ(旧教育テレビ)の『NHK 高校講座 日本史』における「日中戦争」で、「南京事件」について《女性や子どもを含む多くの中国人を殺害》とわざわざテロップをいれ、日本軍の敵として対峙した「中国軍」がいたことに触れもしない。小学生向けの歴史番組『歴史にドキリ』でも、日本が一方的に中国各地に進出し都市を占領、さらに太平洋へと歩を進めた日本を、懲らしめるかの如く米国が立ち上がったかのようなナレーションが加えられている。いわゆる「自虐史観」だ。

 NHKは公式ホームページの「放送法と公共放送」で、《放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによつて、放送による表現の自由を確保すること(第1章総則 第2条)》等の放送法を掲げ、財政の自立が自主性に繋がると受信料の意義を説明する。自主や自律は曲者だ。リベラル陣営にとっても、極左勢力にとっても、日本人を拉致し原爆の開発を進める北朝鮮の主張でさえ、彼らにとっての「自主」であり「自律」だからだ。NHKの唱える「自律と自由」とは、どの思想信条を下敷きにジャッジメントを下すものなのか。少なくとも「高校講座」を見る限り、籾井会長の歴史観でないことは確かだ。むしろ青少年に特定の「歴史観」による洗脳を試みるかの内容が、野放しにされている現実を危惧する。

 いずれにせよ「独裁」は終了する。世襲も後任指名もなく、革命だって起こる気配がない。「独裁」でなかった何よりの証拠だ。再任できなかったのは、単純に「不人気」だったと評価すべきだろう。単純なレッテル張りは大衆迎合の思考停止だ。批判に用いる言葉は正しく選択すべきだと、自戒を込めて筆を置く。