一方、中核都市での医療ニーズが高まるため、地方都市での医師調達コストは高まる。東京から福島県浜通りにアルバイトの医師を呼ぶ場合、その費用は、週末の二泊三日の当直で30万円を超える。東日本大震災以降、アルバイト料は更にあがった。

 さらに消費税は患者に転化できないため、医療機関にとっては損税となる。厚労省は、診療報酬で対応しているというが、十分ではない。地方の中小都市の医療機関の経営は急速に悪化する。

 このような影響は、すべての医療機関に同じように出るわけではない。対応の仕方が異なるからだ。例えば、開業医は、日本医師会の政治力を使い、診療報酬の引き下げを最小限にしようとする。国公立が多い急性期病院は赤字が出ても、税金で補填される。もっとも影響を蒙ったのが、中小の民間病院だ。彼らも業界団体を形成し、厚労省や与党に陳情しているが、その影響力は日本医師会とは比べるべくもない。

高野英男さん(高野病院提供)
高野英男さん(高野病院提供)
 我が国では200床未満の民間病院が、全病院数の過半数を占める。つまり、彼らが地域医療を支えている。高野病院は、このような中小民間病院の典型だ。

 高野病院では、院長が病院の敷地内に住み、24時間365日対応することで、コスト削減に努めてきた。過労がたたり、3月に体調を崩した。そして、今回の急死となった。壮絶な戦死だ。

 実は、このような病院は珍しくない。日紫喜光良医師(東邦大学)の推計によれば、20床以上の日本の病院の約9%が「一人院長病院」だ。多くの院長は高齢だろう。いつ倒れてもおかしくない。高野病院のように、地域で唯一の病院の場合、地域医療は「頓死」する。

 今後、このような事態は益々増えるだろう。どのような救済スキームを準備すればいいのだろう。医療機関が国公立だろうが、民間だろうが関係ない。住民視点にたち、ソフトランディングの仕方を議論すべきだ。