まず、個人の所得税率について、最大38%である累進課税を最大33%にまで減税しつつ、定額控除の拡大や加えて、相続税の廃止を主張しています。このほか、所得税率区分を減らすことによる税還付制度の簡素化や、連邦遺産税の撤廃を挙げています。更には法人税を35%から15%へ引き下げると公約しています。

 投資運用会社が成功報酬として受け取る「キャリードインタレスト」向け税制優遇措置の撤廃や米企業が海外に滞留させている利益への一時課税などもカウンターで提案しているものの、これらの税制改革を行なった場合、当然のことながら減収がイメージされています。その額は今後10年間で4兆ドル以上という巨額の連邦政府減収が予想されており、当然、このことは米国債の格下げを想起させることにつながり債券金利の上昇となっていくことが想定されます。

ロンドン中心部のトラファルガー広場に集まった
トランプ大統領への抗議者ら=1月21日
ロンドン中心部のトラファルガー広場に集まった トランプ大統領への抗議者ら=1月21日
 この物価の上昇や債券金利の上昇の影響を考える上で先行しているのがイギリス金融市場の動きです。長期金利が大幅にあがっていく場合、BREXIT(英国の欧州連合離脱)後のイギリスの国債金利の推移がいい例ですが、イギリスの場合では先ずBREXITで自国通貨ポンドが大幅に下落し、このことで更に輸入物価があがっていき、これまでの金融緩和政策の維持が不可能となり、続く債券市場のパニック的な債券売りで株式市場が揺らぎかねないという流れでもって大きな不確実性が生まれつつあります。株式市場の揺らぎの前には実際に英金利の上昇に伴うロンドン不動産価格の低迷がその事象を示しています。

 トランプ政権下での物価上昇に伴う今後のドル通貨の下落は、トランプ氏の保護貿易主義とも合致しているために政権の後押しをもって加速していくことになりましょう。このドル通貨の下落は輸入物価上昇を通じて更に物価を押し上げていき低金利政策の大幅な変更を伴いつつニューヨークなどの米国不動産価格の大幅下落につながっていくことを意味しています。大幅金融緩和で成り立ってきた高位推移してきた不動産価格が、決不動産価格の上昇してインフレ=不動産価格の上昇に繋がっていないのが現状の英国の状況であり今後は米国の不動産市況であると言えます。

 低金利政策下での活発な不動産市況あってこその拡大する不動産ローン市況であり、その低金利政策や不動産ローン市場に多くを依拠するのがデリバティブ市場の4割程度を占めるドル市場であり、米国金融機関であり、また、株式市況の安定推移である以上、物価をめぐるパラダイムシフトは米金融市場の本質である債券市場を大きく揺るがしひいては国際金融市場に大きな市場変動を呼ぶ恐れがあると思料します。

 個々の人々の生活の基盤である不動産や住宅市場に大きな波紋が起きるならば、そこから生まれるストレスを発散させるためにも外交で強気にでていくトランプ政権の姿が予想されます。米国不動産市況の悪化がデリバティブ市場の揺らぎを通じて世界中に金融不安を拡散していくことと相まって、米国発での対外摩擦の増加という不均衡の拡大、ポジティブフィードバックこそ、トランプ政権下での確度の高いリスクシナリオであると筆者は考えています。