もっとも韓国経済からみれば、すでにFTA交渉で植え付けられた「構造問題主義」が蔓延してしまったほうがよほど深刻のはずだが。さらに為替レートの動向については、従来からの「為替操作国」への認定を、トランプ政権は強く意識する可能性が大きい。そのために過去に実行されていた疑念のある為替介入は事実上封印されるだろう。またデフレスタンスの韓国銀行(韓国の中央銀行)の政策スタンスの変更はないだろうから、筆者のかねてからの予測通りに、そのまま韓国が日本型の長期停滞に自ら入り込む可能性が高い。

 安全保障については、これも米国の対中国・対北朝鮮政策によって韓国の位置付けが大きく左右されるに違いない。その延長で、慰安婦像の設置問題も考える必要がある。

 筆者の見解では、今回の慰安婦像設置は、明らかに日韓合意に反するものである。その非は完全に韓国側にある。と同時に、この慰安婦像問題も含めて、韓国の親北朝鮮勢力の政治的な動きと連動していることを見逃してはいけない。
韓国・釜山の日本総領事館前への慰安婦像設置に対抗して、一時帰国した長嶺安政駐韓大使(合成写真)
韓国・釜山の日本総領事館前への慰安婦像設置に対抗して、一時帰国した長嶺安政駐韓大使(合成写真)
 現在のところ、朴大統領の弾劾が決定し、その後に大統領選挙が行われれば、韓国で北朝鮮・中国寄りの政権ができる可能性が大きい。これはトランプ政権にとって座視できるものではない。さまざまな政治的ルートで、もし親北・親中の新政権に揺さぶりや圧力を明示的にかけるだろう。

 筆者の私見では、それで韓国が米国と関係を悪化させることはできないと見ている。なぜなら米国は韓国の域内の軍事的プレゼンスを支える動機付けを、トランプ政権になっても維持すると考えられても、中国が米国の代替になるとはまったく考えられないからだ。中国は韓国に対して、貢物や服従を要求すれども、その恩恵付きの庇護には無関心であるという、何千年にもわたる両地域の歴史がそれを裏付けているからだ。

 韓国は経済面で米国に必要以上に隷従しているし、また安全保障上でも米国の存在抜きでは、国家の存立さえも事実上危うい。特に安全保障面では、トランプ政権は日本と韓国が外交的摩擦を過度に起こすことにやがて神経質になるだろう。

 そのとき慰安婦像問題は、トランプ政権にとって無視できない位置におかれる。外交的にもまた政治的にも、ボールは韓国側にあることは、米国だけでなく、海外の良識すべてが判断することになるだろう。日本はこの状況をよく考慮に入れて、いまから対応すればいい。仮に新政権が慰安婦像を再び政治利用すれば、そのとき韓国の政治的な停滞もまた決定的になるに違いない。そこまで愚かでないことを望む。