これまで、アメリカの政策について分析し言及する場合には、大統領、議会、圧力団体、世論、シンクタンクなど様々な要因を絡めて何らかの結論を出したり、見通しを示したりするのが常だった。そしてその見通しがはずれたとしても、大体は想定の範囲内に収まった。それは他の主要な先進国でも同様である。

 しかしトランプ政権においては、「金正恩の北朝鮮」「プーチンのロシア」において、それぞれの国の政策を予想するような色彩を帯びてきた。つまり、指導者が何を考えて何をしようとしているのか、当人の頭と心の中を読むことが極めて重要性をもつようになったということである。だからこそ、トランプ政権は不確実性をもち、外部からの予測が難しくなったことを意味する。

 もちろんアメリカは北朝鮮やロシアと政治機構は違うし、アメリカ社会の成熟度も高い。北朝鮮やロシアとは違って、より豊富で質の高い情報も報道されている。上下両院でトランプ氏の共和党が過半数を占めているといっても、党内は必ずしも一枚岩ではない。しかしトランプ氏の頭と胸の内は当人以外わからない。その意味での不確実性は北朝鮮やロシアに近いものがある。

 アメリカの閣僚は、議院内閣制の日本のように大臣=ministerではなく、長官=secretaryである。わかりやすく言えば、アメリカの大統領は行政府で図抜けて権力をもち、長官はそれに従う存在だということである。その上で、トランプ氏はこれまでの大統領の中で、最も自分中心の指導者である。もちろん、実際にトランプ氏に会った安倍首相が言うように「人の話を聞く人だ」という側面もあるが、基本的に「自分」の考えを極めて大事にする。したがって、そんな中での国務長官のティラーソン氏や国防長官のマティス氏の裁量は限定的である。

 さらに、アメリカの政権内の二層制を思い出しておく必要もある。それは閣僚と、一般に「補佐官」という名称で知られるホワイトハウス・スタッフとの関係である。そして補佐官たちは閣僚と同様か、時に閣僚以上に力をもつ。またこの役職は議会で承認を得る必要もないし、政策について証言することもない。したがって、外部からみれば政策の状況はみえにくい一方で、政権側にとっては使い勝手がいい。

 外交・安全保障を担うポストでいえば、国家安全保障担当補佐官がそれにあたり、トランプ政権においてはマイケル・フリン氏がその任にあたる。同氏はオバマ政権で国防情報局長に就任したものの、わずか2年で退任。そこから反オバマ派に転じ、多くの安全保障関連の主流派の専門家たちがトランプ氏に背を向ける中で、いち早くトランプ支持を打ち出した。今回、国家安全保障担当補佐官の座を射止めたもの、その功績からである。

 ところが、国防長官のマティス氏が多くの軍人から最高の敬意をもって迎えられたのに対して、フリン氏の人物像には疑問符をつける声が少なからずある。オバマ政権を2年で退任を余儀なくされたのも、不穏当な発言を繰り返したからである。