ならばマティス氏が政権で主導権を握りそうなものだが、ここはトランプ政権である。前述したように、自分中心のトランプ氏は、自分に近い人物の声を重視する。米大統領ならず世の権力とは基本的にそのようなものだが、トランプ氏のこれまでの行動を見てみるとその傾向が非常に強い。

 したがってこの政権においては、先ごろ上席顧問として加わった娘婿のジェレッド・クシュナー氏が実質的なナンバーツーとなり、副大統領のマイク・ペンス氏、首席補佐官のラインス・プリーバス氏、戦略担当官兼上級顧問のスティーブ・バノン氏のトロイカが、その次に位置する存在になると推測される。
閣僚人事に関する書類に署名するトランプ米大統領(前列左端)=20日、ワシントンの連邦議会議事堂(ロイター=共同)
閣僚人事に関する書類に署名するトランプ米大統領(前列左端)=20日、ワシントンの連邦議会議事堂(ロイター=共同)
 そんな身内・側近政治だから、外交・安全保障も、結局のところ以前から近しい関係を打ち立てていたフリン氏になるのではないかとも思われるのである。だとすると、日本は国務・国防長官が言及した「同盟重視」という前提で楽観することはできない(フリン氏は昨年来日した際に、日米同盟には肯定的だったと言われるが)。そしてニクソン政権が行ったようなホワイトハウスにおける側近政治ということになれば、国務省・国防総省主体のそれよりも、その方針は非常に見えづらくなる。

 さらに就任9日前の1月11日にトランプ氏が行った記者会見での発言にも注目しておく必要がある。この席でトランプ氏はメディア批判を行い、また自らの事業の運営を息子たちに任せて、自らは今後かかわらないことを述べた(それについては説明が不十分で、利益相反の懸念はまだ残ると指摘された)。

 ただそれ以外は、メキシコとの間の壁建設や雇用、産業・貿易問題が中心で、外交や安全保障について多少ふれたものの、それを正面から語ることはなかった。そしてそれは1月20日の就任演説でも同様であった。ということは、トランプ氏の関心は世界全体をにらんだ外交・安全保障戦略ではなく、アメリカが直接的に関係するシリアやIS(イスラム国)など一部の地域や分野に限られ、対外的な関心は基本的に通商問題なのではないかということである。

 さらに言えば、筆者がかねてから、トランプ氏を「ボトムライン大統領」(損得勘定の大統領)だとして懸念しているように、例えば貿易問題で中国から一定の果実を得ることができれば、アジアの大きな波乱要因になっている中国に対する安全保障問題には関心が薄くなるのではないか、そして「間違った」取引をするのではないかということである。

 これらは全て推測である。しかし「トランプのアメリカ」においては、「金正恩の北朝鮮」「プーチンのロシア」と同じように、推測で推し量るしかない。それこそが2017年の世界における「トランプのアメリカ」のもつ大きな不確実性なのである。